昨年の9月から、私はピアノを弾けなくなっていた。友人の家やピアノの発表会などで
「ピアノ弾いて!」と言われるたび、「ごめんなさい」と逃げ回っていた。
何よりその情熱が失われていたし、弾けばいやでも「足りないもの」に気づかされる。それが怖くて。つらくて。
それでも弾くのが「プロ」というなら、私はプロじゃないのかも。私の音楽のモチベーションは「愛する人」と直接、結びついている。18年間、毎週二人でこなした舞台に、一人でのぼる気には、まったくなれなかった。
そして、9月。べラの一周忌のお祈りをし、楽譜の整理をしていたら、急激に強い衝動が突き上げて来た。
「弾きたい!」
ピアノに向かうと、憑かれたように弾いた。10分もしないううちに汗が全身から噴き出て来る。一気にテンションが上がるので、ピアノを弾くといつもそうなる。気がついたら夜の9時。3時間も弾いていた。
「一人でも、ピアノを弾こう!」
そう思えたのは、初めてのことだった。プロとしてでなくてもいい。この一年、友人宅にピアノがあるのに、「弾いて」と言われるたび「ごめんなさい、弾けません」と言うこと自体に、猛烈に腹が立ってきた。自分自身に対する怒り。それはこれまで私を支配していた、恐怖やさみしさとはまったく異なる感情だった。
一年の空白の時間。
それはけして無駄ではなく、必要な時間だったのだと思う。私の心が「一人でも弾きたい!」と、耐えきれず叫び声を上げるのに。
それで今、時間があると「編曲」を始めている。これまでとちがうのは「バイオリン&ピアノ」の二人分のパートでなく、私一人の「ピアノだけ」の編曲というところ。いつか日本で演奏できたらいいな、と思う。
4月のピアノ発表会で子供たちを前に
「次回の発表会では、必ず弾きます!」
と宣言し、拍手までしてもらったので、やらないと(笑)
まずは11月の発表会で、私も練習曲を発表しよう!