9. ももに、かわります

べラが「ニッポンの家族」と定期的に
毎週、国際電話をするようになり
きみどり家にも、新しい習慣が生まれた。

今や、両親も驚くことなく
「はい、はい、べラちゃん、元気~?」
などと、リラックスムードで答えている。
ボキャブラリーが少しずつではあるが、増えてきたべラは
「ももに、かわります」
と、受話器を渡すことをおぼえた。

と書きながら思ったが、
3歳児の「初めてのお買物」みたいだな。
買い物が、電話にかわっただけで。
いや、だからこそ、はじめが肝心。
三つ子の魂、百まで。
べラには、清く美しい日本語を学んでほしい。

そんな親心が通じたのか、ある日突然
「とくさん(祖母)に、よろしくお伝えください」
と、言うようになった。
「ありがとうね、伝えとくね、伝えとくよ」
母は電話で感激していた。

べラは電話を切ると、不思議な顔をしてわたしに尋ねた。
「つたえとく、って、とくさんどうしたのかな?」

わたしは意味なく「だいじょうぶ」と答え、無視することにした。
べラにとっては、すべてが「ひらがな」で聞こえるのだろう。
ときどき、とんでもない質問をするので
今のところ「だいじょうぶ」で、すませている。
知恵がついてこないことを、祈る。

(「べラの日本語レッスン・10」につづく)

~音楽と絵の工房~地中海アトリエ・風羽音(ふわリん)南スペインだより