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ベラ、首の痛みで救急へ

夜中、ベラが突然うなりだした。
「うあぁ、痛い、痛いっ!」
無理やり起こされて、時計を見れば
まだ夜中の2時半。

「首が痛いーっ」
いったい突然、どうしたのか。
夕方まで、自転車で楽しげに
お散歩していたというのに。

首が痛いのは
もう3週間前から始まっていたが
毎週一回マッサージにいき
経過は順調、であった。はず。

こんな「激痛」は予想外。
それもこんな夜中に、突然。
「救急に行く?」
「朝までがんばってみる」

日本でもらった「腰痛用の消炎剤」
を首にびろーんと貼ってみるが
あまり効果なし。
「あ~あぁ~ううーっ」
という、文字通り「苦悶のうめき声」を
一晩中、隣で聞かされていては
とてもじゃないが眠れない。

で、結局、翌朝タクシーで
マラガの救急「カルロス・アジャ病院」へ
駆けつけた。

首を動かすのはもちろん
横になっているのもつらいらしく
「あ~あぁ~ううーっ」
と、とにかくうめき声のとだえる時がない。
なんとかベラの首を支えながら
救急の待合室に着く。
が・・・

「なんという・・・」
待合室には所狭しと、50人以上の患者が
苦悶の表情でうめき声をもらしながら
息も絶え絶えで、イスにうずくまっている。
50人中、ベッド3人、車イス7人。

待合室全体から、低い苦悶のうめき声が
「うう~っ、はぁー、あぁ~」
と、途絶えることなく聞こえてくる。
まさに、地獄絵。

一人10分としても、500分。
この計算が正しいのかもわからないが
一瞬にして、血の気が引いた。
それも、見るからにみな救急患者。

「痛い、痛い、痛いっ!痛み止め打ってくれ~」
と絶叫するおじさん。
できるものなら私が打ってやりたいと思う。
「がんばって!ねっ」
と思わず腕をさすると、恨めし気な眼で
「痛み止めはないのか、この国は!」

その横で、頭から血を流しながら
お兄さんが立ち上がる。
「もう1時間半、待ってるんだ。
いつになったら診てもらえるんだ」

その隣では、車イスに乗ったおばあさんが
「痛くて飛んできたのに、
 待合室でほったらかしじゃないのっ」

この様子を目のあたりにしながら
「いったい私たちは、いつ診てもらえるのだろう」
と、気が遠くなった。
血も流れておらず
痛みで絶叫することもない患者など
後回し、であろう。

結局、3時間、待った。
健康な私でさえ、腰と背中が痛くなった。
患者なら、永遠に思える3時間、だろう。

で、診察は5分。
首をちょちょいと触られて
薬の紙をもらっただけ。
レントゲンも撮らないのか。
ふつふつと怒りがわいてくる。
「だいじょうぶですよ。安静にしてれば」
ドクターはそう言うが、本当かな。
こう言っちゃ悪いが、24,5歳の先生が
多くの患者のケースを扱ってきたとは思いにくい。

「もう、帰りたい」
ベラが悲しそうな表情でつぶやいた。
「そうだね、家に帰ろ」
タクシーで家に着くや
ベラは疲れと痛みで、寝てしまった。

その間に、私は薬を買ってきたが
その夜、更なる激痛が襲ってくるとは
思ってもいなかった。

(明日に続く)