先日、スペイン版オスカーである「GOYA(ゴヤ)」の授賞式があった。
今年は、アルベルト・ロゴリーゲス監督の
「La Isla Minima(ラ・イスラ・ミニマ)」が
10部門近くを受賞して、圧勝という感じがした。
セビージャの小さな村を舞台にした、サスペンスもの。
マドリッドからやってきた探偵が、連続殺人事件に挑む!
というストーリーらしい。
まだ見てないから、感想は書けませんが
サスペンスもの、探偵ものは好きなので、ぜひ見てみたい。
といっても、スペインの不況の波をまともに受けて
私たちはもう2年以上「映画館に行くことができない」でいる。
それくらいスペインの不況、慢性化した失業状態は
国民から、文化的生活を奪ったのだ。
映画館より、食料、電気代、家賃・・・というわけで
ここ2,3年の、映画館のガラスキ状態は
映画館、映画製作者&関係者を
大いに悩ませている。
その理由のひとつに
「税金アップによる、入場料の賃上げ」
が、ある。
これでさらに、映画館から市民の足が遠のいた。
私たちだって、映画は見たい。
が、家賃か映画か。
食料か、映画か。
と言われれば、迷うことなく、映画をあきらめる。
そんな中での、「ゴヤ」授賞式だった。
会場には、「文化・教育大臣」も招かれていた。
受賞者が発表されるたび、会場から歓喜の声が上がる。
が、私が強く興味を引かれ
思わず画面を見入ってしまったのは
何人かの、受賞者によるスピーチだった。
彼らは、受賞の感謝を短く述べたあと
いきなり「税金アップの反対」を
大臣に向かって、訴え始めた。
それが、一人だけじゃないから、たまらない。
最初は笑っていた大臣の顔が、だんだん引きつってくる。
「一般市民が映画館に行けるように、税金を引き下げるべき!」
ある者はストレートに、またある者はブラックユーモアで
大臣に向かって、はっきりと意思表示をした。
「こんな、お祝いの場で」
と、言われるかもしれない。
実際、右翼ファッチョの政治家および新聞社からは
批判の声も上がった。
が、賞を受賞できた「感謝と喜びを述べるだけ」では
私は「自分本位」だと、思う。
今、自分がいる社会において、映画が、本が、絵が、音楽が
どういう役割を持ち、人々が文化や芸術に触れて生活できることの
大切さを訴えるのも、授賞式の大切な役割、意味のひとつだと思う。
スペインでは、自分の政治的、思想的立場を
はっきりと表明する。
「それで失うものがあっても、けっこう!」
という腹のくくり方は、スペインの場合
舞台役者、俳優、映画製作関係者、芸術家などに
特に顕著である。
そこが、日本のクリエイター、アーティストたちと
はっきりと一線を画す点だ。
もうすぐ、「オスカー」が始まる。
テレビはこぞって、授賞式の様子を放送するだろう。
まずは、誰がどんなドレスを着るか、かな(笑)
オスカーもいいが、私は無名の監督たちの
ほとんど知られていない
小さな宝物もののような、味わいのある作品が好きだ。
この世に何万と存在する、無名の星のような。
商業ベースに乗らない(もうからない)から
一般の映画館では上映されない小作品。
しかし、その星は、わたしたちの心を照らし
なぐさめ、涙させ、大笑いさせてくれるのだ。
「人間にとって大切なもの」が
つめこまれている。
それこそ、芸術の本質ではないだろうか。