先日、私の敬愛するプエルトリコのピアニスト
「パポ・ルッカ」師匠のことを書いたが
毎日、YOU TUBEで、彼のピアノを聴けば聴くほど
演奏映像を見れば見るほど
息もたえだえ、ふらふらになってしまう。
「チュニジアの夜」を練習するたび
心はプエルトリコへ、飛んで行く。
ついに、最近では
「パポ・ルッカ師匠のように弾きたい!」が高じて
「パポ・ルッカ師匠に会いたい!」
になってしまった。
思い立ったら、すぐ行動!なので
さっそく、彼の率いる「ソノラ・ポンーセニャ」の
オフィシャルサイトを探してみる。
が、ないのである。探し方が悪いのかな。
こんなに有名なのに
どれだけ探しても、コンタクト先が出てこない。
どうも、ツイッターやFacebookでコンタクトできるらしいが
3年前にやっとパソコン&メールを始めた私には
高嶺の花。
「ううー、パポ・ルッカ師匠に会いたい!」
うめく私に、べラがぼそり。
「で、どこにいるの?」
「たぶん、お国のプエルトリコ」
「ふーん、遠いよね」
確かに、遠い。
が、距離はこの際、私にとって問題ではなく
まず何より、師匠に尋ねたいことは
「ピアノのレッスンをしてもらえるかどうか」
なのである。
プエルトリコへ行く前に。
行ってからじゃ、ねぇ。遅いでしょう。
どこに住んでいるかもわからないなんて。はあぁ~。
せめて、都市の名前だけでもわかれば
プエルトリコに着いてから
「パポ・ルッカがどこに住んでいるか、知りませんか」
って、現地の人に尋ねて回れるのに。
そうつぶやいて、ため息をもらすと
「まさか、もも、本気で言ってるの・・・」
べラはバイオリンを抱えたまま
完全に固まっている。
「町さえわかれば、家まで行けると思う」
「住所もわからず、プエルトリコまで行くつもり?」
「うーん、他に方法ある?」
私は少しもかまわないのだが
問題は「滞在中に会えるのか」という
タイムリミット、時間の問題なのである。
地図を見てみるとプエルトリコは
非常に小さい。車で回れば、一週間で回り切れる島だ。
無人島じゃ、ないんだし。
同じスペイン語なんだし。
「また、ももの『心の師匠』探しが始まった~」
べラが、深々とため息をついた。
「確か、セルバンテス劇場へ行ったときも
『ベボ・バルデス師匠』に直接質問したい!って大変だったよ。
劇場中の人を巻き込んでさぁ」
「・・・・・・・」
「その後は確か、マルベージャの屋外コンサートの
『ホセ・コランジェロ師匠』ね。
あれも、楽屋に押しかけてすごかったなぁ。
警備員のおじさん、押しよけてさぁ」
すべて事実なので、言い返す言葉もない。
が、この会いたい気持ちは
止められないのだ。
「どうやってかは、わからないけど
パポ・ルッカ師匠に私、絶対に会う!」
「でも、レッスンしてくれるとは限らないよ」
「どうして?こんなに彼の音楽、ピアノが好きなのよ!
毎日100回もくりかえし聴いて、一音一音採譜して。
こんなにパポ・ルッカの音楽を愛している人に
レッスンしなかったら、誰にするのよっ!」
「知らないよ、僕は」
べラは、言葉を失って立ち尽くしたまま
「ももが、そう言いながらパポ・ルッカの家の前で
本人に迫っている姿が、今見えた・・・」
と、恐ろしげにつぶやいた。
きっと会える、などと夢見ている時間はない。
いかに、会うか。
それが、問題だ。