ニッポン滞在中、べラがすっかり心を奪われてしまったものに「くまモン」がある。
左は、きみどり家の床暖房の上で、こっそり「くまモン」と遊ぶ様子。
「買って帰りたい」
と、珍しく訴えるが
「これは熊本県のお土産なの、この辺じゃ売ってないよ」
「ええーっ」
哀しげに、くまモンをいじくり回すベラ。
「それにこれは、敦美お姉さんの九州土産だから、もらうわけにはいかないよ」
それを聞いて
「ください！」
とは言えなくなってしまったベラは、最終日まで、くまモンとこっそり遊んでいた。
「スペイン語も話すなんて、くまモンすごいね！」
「バイオリンも弾けるかな」
こんなやりとりを、背中ごしに聞いていると、やるせなくなってくる。
こんなに喜ぶとは思ってもいなかったので、両親も驚き、ついに同情しながら
「くまモン、スペインに行く？」
と、人形に向かって尋ねるようになってしまった。
さて、最終的に、スペインへ渡ることになったくまモン。
べラは大切に「手荷物」の中にくまモンを入れ
「これから、いっしょにスペインに渡るんだよ！」
などと話しかけて、私を仰天させた。
今までぬいぐるみには、いっさい興味を示さなかったのに。
これはいったい、どうしたことか。
そうして、スペインへ渡ったくまモンは
手荷物の中から解放されると
テレビの上に置かれた。
私には何の相談もなく、ベラがくまモンの定位置を
「テレビの上」と、勝手に決めてしまったのだ。
「なんで、そこなの？」
「だって、友達がたくさんいるから」
「・・・・・・」
確かにうちのテレビの上には
マスコットがごろごろと、乗っかっている。
が、これは「飾り」なのではなく、「オウム除け」。
目のある像を置いておかないと
飛んできて、テレビに噛みつくせいなのである。
「あのー、けっこう目立つよね」
さすがに「邪魔だ」とは言えないので、言葉を濁す。
テレビの画面を見るたび
自然とくまモンが視界にはいってくる。
それも、黒、白、赤の配色が鮮やかで
デザインもシンプルなので
よく、目立つのだ。
少なくとも、番組よりずっと目を引く。
新しい家族の登場に
オウムもさっそく興味を示して、近づいて来る。
動いて、話すんだから
そりゃ、いっしょに遊びたかろう。
ベラのいない時に、床の上で遊ばせてみると
「ぐぐー、ぎゃうっ」
「ググー、ギャウッ」
「ほーほー、ぐっぐっ」
「ホーホー、グッグッ」
すごい。
そう、くまモンは「オウム語」も話すのだ。
少しトーンの高い声で、答えていると
まるで、オウムが２羽、いるよう。
って、見ると、オウムとクマなんだけど（笑）
スペインに着いてから
くまモンは、超忙しい日々を送っている。
それもベラが、友人、レッスンの生徒
誰これかまわず、くまモンを披露するため。
それも、そのとき必ず言うセリフが
「ニッポンの最新テクノロジーをお見せします！」
最新。
たぶん、もっと先を行ってると思うよ。
ニッポンのテクノロジーは。
が、facebookもツイッターも、ワッツアップ（でいいの？）も知らず
wifiもスマートフォンも「なんだそれは」という私たちにとって
くまモンは、うちにある最高のテクノロジーなのに、ちがいない。
