先日、買い物の帰り、車の窓からいつものように「ゴミ捨て場」を眺めていると、白く光るものが目に飛び込んできた。
それは、タイル。
左の写真が、それ。
真っ白で正方形、欠けても汚れてもいない。「これはなんということじゃ!」
せっせと車に運び込む。ベラはあきれながら
「よく見つけるよねぇ、鷹のような目」
と、あきれながらも車で待っていてくれる。
何しろ、重い。一度に8枚くらいしか運べない。落としては大変なので、ていねいに扱う。
ゴミ捨て場と車を、4往復。
運び込むたび、べラの顔が険しくなっていく。
「あと、一回だけ!ポル・ファボール」
せっせとタイルを運ぶ私の姿を見つけて
工事のお兄さんが寄ってきた。
「あのー、これ、ゴミですよね」
いちおう聞いてみる。
泥棒になってしまっては大変だ。
「ゴミだから、好きなだけ持って行っていいよ」
「うれしーい!」
「下にも、あるよ、ほら」
「うわぁあっ」
板をお兄さんが持ち上げると
さらに30枚くらいの
白いお姫様のようなタイルが姿を現した。
「うつくしい~」
本当ならすべて持って帰りたかったが
ベラが車で待っているので
泣く泣くあきらめ
お兄さんにお礼を言って、ゴミ捨て場を後にした。
車に戻ると、ベラがすかさず
「工事の人に、文句言われなかった?」
と、尋ねてきた。
ちゃんと見ていたのだ。
「まだ真っ白なのが、30枚くらいあってねぇ」
「僕はもう行くよ、そんなに拾ってどうするつもり」
「どうする、って今すぐ答えられないよ。
たぶん描いたり、家のリフォームに使うんだろうな」
「何に使うかもわからないのに、拾ってどうするの」
「だからー、いざ必要な時にタイルは落ちてないんだってば」
車がマンションに着くと
「で、このタイルは誰が家まで運ぶの?」
と、聞いてきた。
「わたしです」
こんなことをやっているので
細腕だが、腕力はある。
さて、真っ白なタイルは
テラスで出番を待っている。
ゴミ捨て場から、救出したのだ。
きっと、喜んでいるのちがいない。
「あのピカソだって、タイルに描いたんだからね」
と、いばって言うと、ベラは遠くを見ながら
「ピカソだから、テーブルクロスに描いて
『これで、食事代に』で、いいんだろうなぁ」
と一人、うっとりしていた。