「検査に来てください!」
と、電話がかかってきたので
ベラはいそいそと出かけて行った。
どことなく、表情がうれしそう。
よかったよかった。
これもすべて、Jさんのおかげである。
クリニックに着くと
「MRI」の機械がベラを待っていた。らしい。
私はピアノレッスンで一緒に行けなかったので
ここからはすべて
べラが私に語ってくれたことである。
小さな頃、べラは
友人が発砲した散弾銃をまともに受け
今も肩から首にかけて
10発近い玉が、体の中に残っている。
そういう人は、普通の「MRI」はできないらしく
特別な「オープン型MRI」という機械で、検査を行うらしい。
「うちには、そのオープン型はないんだよねー」
ドクターは申し訳なさそうに言った。
「すぐ予約入れてあげるから。この近くのクリニックで」
そうして、次のクリニックへ移動すると今度は
「あれっ、機械が入らない・・・」
なんと、ベラの脇腹が広すぎて
MRIの機械が、へそのところで止まって動かないのである。
「いったい、どうしたら・・・」
ドクターも看護婦さんも顔色を変えて
なんとか機械の中に、ベラのお腹を突っ込もうとするが
「ああー、痛い、苦しいです」
と、うめくベラを見ながら
「これは、うちの機械では無理です」
という結論に、いたった。らしい。
哀しげなベラに、ドクターは明るく
「心配しないで。『特別サイズのMRI』があるクリニックに
回してあげるから。ねっ」
『特別サイズのMRI』って、何なんだ?
そんなもの、あるのか。
疲労困憊で帰ってきたベラの
この話を聞きながら
「本当なのか」と、疑ってしまうほどだった。
「僕みたいな体のサイズの人、これまでにいなかったのかなぁ」
いただろう。そりゃ。
あまりのシステムの悪さにくらくらしながら
しかし、ここは何とかベラをなぐさめねば、と
「この話を、ブログに書こう!」
と言ってみた。
とろん、とした顔で振り向くと
「ニッポンの病院は、こんなことないだろうね」
背中を丸めて、マテ茶を飲むベラ。
なんだかかわいそうになりながら
「たらい回し」という言葉が、ふと頭に浮かんだ。
(来週につづく)
ベラはお相撲さんよりおっきぃのかなぁ、どうなのかなぁと、ちょっと思いました。
ベラがちゃんと検査受けられますように。
「クロさん、ありがとう!なぐさめてくれて。
機械に無理やり突っ込まれたとき
お腹はぎゅっと引っ込められましたが、
脇腹の肋骨はどうしようもなく、痛かったです。
でも、検査してもらうまでがんばります!」(べラ)