口紅で描く

CIMG0901 CIMG0903 CIMG0907 最近、時間があると
家中をひっくりかえして
「18年ぶりの大整理」を
行っているのだが
なんと無駄なものが
ゴロゴロ出てくることか。
自分でもあきれてしまう。

さて、今日の話は
9月のまだ暑い盛りのこと。
ベラが友人宅にお茶に
呼ばれていったので
私はさっそく
「引き出しの大掃除」を始めた。
そのとき奥からポロンと
ころがり出てきたのが
「期限切れの口紅」
数本だった。

「こんなものを使っていたのか」
と思わずしんみり。

ここのところ忙しくて
「リップ」だけだったのだ。
ま、唇がカサカサにならなければ
それでいいという感じ。

さて、その、「口紅」だが
迷わず私は
ポイっと、ゴミ箱に捨てた。
その瞬間
「はっ」
とした。
「これ、描けるのでは!」

思いついたら即、行動。
あわてて口紅を
ゴミ箱から拾い出し
そこらにあった厚紙に
描いてみると・・・

「ぐにぐにー」
おお、なんという。
そう、筆とちがって
口紅は柔らかいので
実に不思議な感触が
快感となって伝わってくる。
「ぐにゅっ」とした感じが
なんとも興味深い。

それにとりつかれ
気がついたらもう夕方。
友人の送迎でベラが帰ってきた。
「絵を描いてたの?」
うれしそうに聞いてくれたので
「そう、口紅でも描けるんだよね!」
「・・・・・」

しばらくあきれて
絵と私を交互に見ていたが
ぽつりと
「今度は、期限切れのケチャップで
描いたらどう?辛子でもいいけど」
と、穏やかにしめくくった。

亡くなる2週間前でも
ユーモアをなくさなかった
ベラのおかげで
私の看護生活はずいぶん
和やかな空気に包まれていた、と思う。

この「口紅画」は今でも
うちのリビングの天井から
ぶら下がっている。

海から流れ込む風に
ときおり「ふらーっ」と揺れたり
オウムが飛び回るたびに
「ゆっらゆっら」している。

そのたび、私は
ベラのこの言葉を思い出す。

一人になり
マヨネーズもケチャップも
まったく使わなくなり
「期限切れのケチャップで
描く日は近いな」
と、思う。

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