ピアニスト時代の写真

「盗難事件」の後、別人に生まれ変わった私は、まるで憑き物が落ちたように「大整理」を始めている。

大処分。口で言うのはたやすいが、こんな盗難事件に遭わなかったら、正直とても捨てられなかった物ばかり。

人間、一度リミットを過ぎてしまうと、一気に世界が開けるらしい。

大処分の基準は
「二年以内に使わかどうか」
である。

二年以内に使わない。と判断されるや、まず資料室に運ばれる。ここが一時保管所。空いた時間を使って二回目のセレクト。

どうしても個人的に大切なものは「日本に持ち帰る」という手もある。とは言え、スーツケースに入れる量は限られているので、やはり大部分はあげる&捨てる方に回される。

で、「アルバム」なのであるが、これが一番時間がかかった。というかまだ完了できていない。

九割は一気に捨てたが、残りの1割がなかなか進まず(笑)。20年間分だから、選んでいるとつい手が止まってしまう。

18年間ピアニストをしていたのだから、ピアノを弾いている写真が多いのは当たり前だが、一つ一つの場所に思い出があって・・・

そして。思いがけず、自分の表情に目が奪われる。なんて楽しそうに、また真剣にピアノに向かっていたんだろう。

楽しいばかりではけしてなかった。仕事である以上、厳しいコンディションの中、大変な演奏も沢山あった。

夏のハイシーズンはホテルをかけ持ちして弾く。毎日、連日弾いているともう背中が痛くて
「このまま気を失って、頭を鍵盤に打ちつけて倒れたい」
とさえ思った。

「そうすれば弾かなくていいから」
今思えば笑い話だが、それくらいプロとして弾いていた時は、途切れることのないハイテンションの中にいた。

今は、なんておっとりした生活の中にいるのだろう。すっかり「夜型生活」から遠ざかって、朝は自然に目が覚める。こんなことピアニスト時代では絶対になかった。

今は今で、毎日レッスンや展示会に追われてはいる。が、一日の終わりに心穏やかな時間が届けられる。

ピアニスト時代は演奏して家に帰ると、まだ体中にアドレナリンが充満していて、すぐには寝付けなかった。

あれは独特だと思う。
「人前で演奏する時にドバっと出るアドレナリン」
日常生活とは明らかにちがう次元。世界。

ピアニストをやめた時は、何だかさみしい気持ちになった。あのアドレナリン体験に体も心も慣れていたから。

でも今は
「目覚まし時計なしで朝目覚める歓び」
「自分の呼吸で生活する幸せ」
を味わっている。

大切なのは「今、何を手にしているか」なのだろう。
そんなことを、写真を整理しながら、思った。

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「ピアニスト時代の写真」への2件のフィードバック

  1. アドレナリンのせいで 眠れない! 私も最近経験し始めています。 まだまだ半人前ですが スポーツイントラに挑戦し クラスでエネルギーを使い果たした後 そうなります! それにしても ももさん 輝いている これらの写真はもちろん保存で!

  2. スポーツは出ますよね!いい意味での体内ドラッグが。どんどんやりたくなる。スポーツイントラ応援しています。

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