昨日の続き。台所の流しの下にある水道管がいきなり
「かぱっ」
と二つに分離したことによって発生した「水漏れ問題」。
あわてて工務店に接着剤を買いに行ったのだが、私の後ろで並んでいたお兄さんが、どうも「日曜大工の達人」みたいな人なのである。なんとなく口調や雰囲気が。
「ああ、水道管ね。それなら絶対これがおすすめ」
と、私に手渡してくれたのは、不思議な筒状の代物。
「どうやって使うんでしょうか?」
「まず、筒から出したらよく指で練って。粘土だと思ってくれればいいから。数分したら水道管の隙間を埋めるようにしてつけていくんだけど・・・」
お兄さんは今や店内の「なんでもアドバイザー」と化していた。近くにいたおばさんなどもう
「お次は私よ」
的な目で、お兄さんの話に深くうなずきながら寄り添っている。
「十分以内につけてね。次第に固まっていくから。数時間で固まるけど、くれぐれもその間、水は流さないように」
「わかりました。ムーチャスグラシアス!」
「うまくいくといいね」
私は精神的にも後押しされ、意気揚々と引き揚げた。で、再びキッチンの床に座り、水道管とご対面である。まずはそっとタオルで水気を取る。
「ああ、もうひとつ手があったら」
と思うが、そばにいるのはオウムだけ。こちらは汗だくで朝から走り回っているというのに。
「ぷぷー、ぶっ。ほっほー」
と独り言を言いながら、作業中の私の足もとにまとわりついてくる。
「ちょっと、あっち行って」
「ほっほー、ぶぶぶっ」
軽く足蹴りにして、オウムをわきへどかす。だって
「手が足りない」
状態なんだから。
その時であった。
「うわぁあ、痛っ」
信じられないことに、この緊迫したシチュエーションの中で、オウムが私の足に思いっきり噛みついた。
「痛ーい!」
絶叫するが、手は離せない。少なくとも数分は。今まさに水道管の合体部に粘土をぐるりと巻き付けたところなのだ。
「遊んで」
と、その顔は言っている。
「今ママが、どういう状況にいるのかわからないのっ」
わかるはずが、ない。から、やるのだ。
「はああぁー」
ため息をつきながら、なんとかオウムの攻撃をかわしつつ、いちおう水道管は固定された。
「忘れて水を使わないように、蛇口にタオルでもかけておこう」
というわけで、その日は半日水回りが使えず。でも、そんなことはどうでもいい。
それより私の心は、ある一点に集中していた。
「あぁあ、どうかちゃんとくっついていますように!」
天を仰いで手を合わす。
これでダメなら、状況は極度に悪化する。なにしろ自分で今つけた
「粘土状接着剤をまず取り除く」
ことから始めなくてはならないのだ。
なんて恐ろしい。何度も何度も祈る。お供えまでした。リンゴとレモン。そして、夜。
「こわいよー。でも水を流して確認しないと」
心を決めて蛇口をひねる。ちょろちょろと水が採水口に吸い込まれていく。もちろん私は床に腰を下ろして水道管の
「接着部」
をじっと凝視。
「おおー、大丈夫・・・みたい」
なんという歓び。幸福感。そして安堵。感謝の気持ちでいっぱいになる。
もしかしたら、明日いきなりまた
「かぽっ」
と、水道管が分離することもあるかもしれない。
が、今のところOK。今夜は安心して眠れるのだ。もうそれだけで
「すべてよし」
ということにしよう。
せっかくなので「生ハム&チーズ」の写真を紹介します。先日友人インマと夕食した時のもの。ちなみに正面の飲み物は「ティント・デ・ベラノ」。赤ワインのソーダ割り。マラガでは大人気のドリンクです。ぜひお試しを。