スペインでは基本的にお店は
「土曜日の午前中」
で閉まる。そして日曜日は、完全クローズ。オーレ!
別に服屋さんくらいならかまわないが、薬屋さんもしかり。なので、とても困る。
いちおう「休日オープンの薬局」として、持ち回りで必ず何店かはオープンするようにはなっているのだが
「近所の薬局に行きたい」
んだから。病気なのにわざわざ検索して、バスに乗って行く。って。ねぇ。
そんなわけで、土曜の午前中。ベッドの中で熱を測りながら
「薬局、行くなら今だよなぁ」
しかし、腰は重い。っていうか、体が重いのだ、文字通り。まずは朝食を食べなくては。
ふらふらと立ち上がる。台所までの距離が、すでに遠い。これでセントロにある薬局。となったら、もう「日帰り旅行」くらいの心理的距離である。
「しかし、薬は欲しい」
この場合、一つの薬を具体的に指している。
スペインには泣く子も黙る
「イブプロフェノ」
という薬がある。これは
「炎症にはとりあえずこれ!」
という、どこの家庭にも必ずあるポピュラーな薬。たとえ病院へ行っても、とりあえず処方されるのはこれなのだ。
「まずはイブプロフェノ。これで効かなかったら抗生物質」
スペイン的王道であろう。抗生物質は医者の処方箋がないと買えないので、Bプランにしておく。
その時、アイフォーンが「ピン、ピン」と立て続けに鳴った。見ればなんと。アロラ村に住む画家の長縄しんじさん。
別件でメッセージをいただいたのだが、扁桃炎だと告げると
「薬を持ってそっちへ行きます」
「えっ、アロラから?」
「今日の夕方マラガに行く用事があるので、その前に寄ります」
寄ります、とはいえ、アロラ村からマラガまで列車で45分。セントロからうちまでバスと徒歩で45分。待ち時間など含め、のべ2時間以上の旅である。
大先輩にそこまでさせるのはさすがに申し訳なく
「大丈夫です。様子をみてみます」
「いや、薬がないとだめだ。行きますよ」
「なんだか、救助隊のようですね」
その時の長縄さんの返事が、今日のブログのタイトルになった。
「アロラ救助隊は今日も行く!」
お茶目な人なのである。そうして現れた長縄さんは
「薬、レモン、はちみつ」
を持って来てくださった。
そして。お見舞いの「鉢植えの植物」が一つ。
「あなたが描く絵によく似てると思って。ほんとよく似てるよね。このはっぱの感じとか」
さすが。の、ビジュアル感。視点。感性。私の絵の印象が、こんな可愛らしい植物になって届けられた。
テラスでお茶を飲みながら、しばしおしゃべり。とはいえ、のどが痛くて声が出ないので、珍しくぼそぼそと(笑)。
「長居してはなんだから」
と帰って行かれた長縄さんが、届けて下さった薬をその夕方からさっそく飲み始めてみる。
「救助隊によって届けられた」
と思うと、なんかもうそれだけで
「絶対効きそう」
である。
で、やはり。効果はてきめん。翌日からのどの炎症が治まり、熱も下がり、みるみる元気が出てきた。
そのかわり、痰やせきが始まったのだがあの
「つばも飲み込めない」
痛みからの解放は、それだけで私に幸せをもたらした。
喉が痛くてほとんど何も食べられなかった四日間。おかげで、この一週間で1,5キロやせてしまった。
病気になると、いつも思うが
「心がリセット」
され、ほんのささいなことに幸せを感じるようになる。
たとえば、のどが痛くないだけで。熱がないだけで。食べられるだけで。眠れるだけで。感謝の気持ちでいっぱいになる。
さっそく、かぼちゃやニンジンのポタージュスープなどを自力で作り、毎日ブドウやリンゴ、オレンジにイチゴを食べまくっている。
なにしろ今週の日曜日は
「春の発表会」
なのだ。なんとしても体力を回復せねば!
最後になりましたが、長縄しんじさん、わざわざアロラよりありがとうございました。救助隊の登場で、心身ともに元気をいただきました。
なんだかこの小さな植物が、かけがえのないものになりました。見ていると、私の描いた絵の「精」のように思えてきます。
早く元気になって、今度はしんじさんのアトリエへ伺いますね!