5. パチルタ(ひばり)

今日の演奏テーマは「パチルタ(ひばり)」です。
べラの大好きな中央ヨーロッパのジプシー音楽のひとつ。
このライブの日も、まったく予定になかったのにいきなり
「パチルタ弾きたい!」
と突然、言い出してくれたのでした。

ところで、映像を見ていて気づきましたが
わたしたち「たて長」に映ってますね。
You tube にのせる作業をしてくれたアルミンさんと
どうしようか、って話してたんだけど
結局、べラのひとこと
「せっかく、僕やせて映ってるんだから。どうして直すの~!」
に負け、スリムバージョンでいくことにしました。

ついでに言うと、わたしの「日本語トーク」のところは
カットしようと思ってたのですが、
これを見たマラがの友人たちが口をそろえて
「すっごく楽しそうだから、絶対入れた方がいいよ~!」
というので、従うことにしました。

にしても、なんてトークが下手なんでしょう。
せっかく「スペインから来日したアーティスト」として
扱ってもらっているのに、あまりに「庶民的」。
来日アーティストっていうより、
デパートの催事場で、みのもんたといた方がぴったりだ。

「はああ~っ」
とため息をつきながら、マネージャーの大野さんに訴える。
「なんとかなりませんかねぇ、わたしのトーク」
「いいんじゃないの、あのギャップが」
「ギャップ、って?」
「だから~、眉をしかめてタンゴ弾いたあと、あのトークの状態に戻る、っていう」

本気なのかどうか、よくわからなかったので
とりあえず「トークの猛特訓」は、見送ることにした。
が、そのときわたしの横で、
念仏をとなえるような、べラの声が響いた。
「みなさん、今日はありがとう、ご、ご、ございました~」
「みなさん、今日は寒いですね。さむい、さむい」
「いってらしゃ~い、ただいまー、おおっ、おかえり~」

すばらしい。
わたしの日本語より、メロディラインも音楽的だ。
なにより本人がうれしそう。
う~ん、これなら特訓のしがいもありそうだ。
「べラのトーク・・・か」
思いがけぬ発見に、
「朝ごはん、朝ごはん」
と一人くりかえすべラの横顔に見入る。
「がんばってね」
と言うと、こちらをふり返り、少し考えてから
「はい、がんばります」
と、答えた。

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