パタン、と音がして「扉」が閉まる。心の。外へ向かって流れていたエネルギーが、内へと向かう。
ここ3日、誰とも話すことなくひたすらアトリエへこもり、大整理&今期の準備を続けている。処分する物が山のよう。
玄関にうず高く積まれた紙、布、板、容器、本・・・で、今誰か来てもドアを開けられない状態(笑)。だからできるだけ早く完了せねば。
「もしかして使うかも→保存」を「2年以内に使わないだろう→処分」に変えると、恐ろしい変化が家の中に起こる。
物を「見て、考え、選ぶ」を即断即決でやっていくと、自分のプライオリティがパキパキと決まってくる。これからの3ヶ月、半年がはっきりと目に見えるようだ。
とにかくピアノレッスンが本格的にスタートする9月までに、大整理・大処分・準備を完了せねば。
私は社交的である。と同時に、孤独な人間でもある。アーティストはたいてい孤独に慣れている。そこが自分の生きる場所だから。
一人黙って一日中、数日間続けて作業をしていると、深い呼吸、瞑想に入る。あまりに集中するので、時間や肉体の感覚も忘れてしまう。
棚の奥からガラスのボトルが見つかり「捨てようか」と迷った。が、ふと気まぐれで「人魚」を描いてみたくなりペンを取る。
透明のボトルに白のマーカーで描いたから、よく図柄が見えない。
「そうだ、色のついた水を入れてみよう」
絵のイメージは「地中海の水の中に住む人魚」だったので、水色にしてみる。するとどうだろう。
海中で暮らしている人魚が、魔法のように浮かび上がってきた。当たり前だけど、人魚には「海の水」が必要だったのだ。
テラスに出て、ボトルをかざしてみる。このまま海に注いだら、人魚がボトルから滑り出て、地中海へ帰って行くような気がした。