物もちのいいベラ

電子ピアノの「楽譜たて」がとつぜん、めりめりっと壊れ
ベラが家にあった薄い板で、作り直してくれたのはいいが、
「これじゃ、いかにも板、ってわかっちゃうよねぇ」
わたしは、電子ピアノの楽譜たてをながめながら,ため息をついた。
「やっぱ、黒じゃないと。ピアノと同じ色の」

さっそく、黒い塗料をひっぱり出してきて
テラスで楽譜たてを塗ることにした。
「おおっ、いい感じだね」
見ていたベラが
「じゃ、僕も塗っちゃおうかな~」
「何を?」
「バイオリンの箱」
 
確かに。
ベラのバイオリンケースは、見るからにぼろぼろ、はげはげである。
もう少しがんばれば、「アンティーク」の域に入りそうだ。
「演奏シーズンが始まる前に、手入れしてあげないと♪」
ベラは鼻歌まじりで、はけを手にバイオリンの箱を塗り出した。
そして、二度塗りを終えたバイオリンケースは
見違えるように、美しくなった。
「おおっ」

わたしが思わず声をもらすと、ベラは満足そうに
「ついでにケースの中も、なおしちゃお」
と、今度はクギや皮など持ち出し、せっせとテラスで働いていた。
「ほほ~っ」
これまた、すばらしい。
「すごい~、じゃ、ここも手伝ってくれる?」
わたしは、棚を作りたかった台所や寝室に、ベラを連れていった。

勢いにのり、ベラはせっせと働きだし
気がついたら、もう夕方の5時。
そのときになって、火がついたように騒ぎだした。
「ああ~っ、もう1日が終わっちゃう。こんなことして。
天気がいいから僕、お散歩行きたかったのに」
そして、わたしの方をうらやましげにじろりと見ながら
「ももに、巻き込まれた」
と言い残して、自転車で海に出かけていった。

1~3月は、わたしたちにとって「今シーズン」のための準備期間。
2月から、音楽づくりを始め、
3月は、楽器や機材、備品のチェック。
4月は、最終的なあわせ練習。
そして、4月下旬から10月にかけて
連続ライブ演奏期間、つまり「今シーズン」が始まる。

スポーツ選手といっしょで、シーズン中、
一番わたしたちが気をつけているのが、健康管理。
ケガやアクシデントなく、演奏に穴をあけることなく
シーズンを無事完了することを、何より願っている。
そのために両親からもらった「お守り」を、
最後にベラは、バイオリンケースにそっと入れた。

今シーズンの衣装もチェックし、ハンガーにかけてそろえる。
「とみ子さんにこれ、よく似合う、って言われた~♪」
と、かかげるベラの「一番お気に入りのシャツ」は
ハンガリーの刺繍が、袖口とえりもとに入った手づくりのシャツ。
日本にも持っていき、それが数十年前にほどこされた
「お母さんの刺繍」だと聞いた母は、仰天した。

「物もちが、いいんだねぇ~」
たしかに。
思えばベラのものって、みんな手作り。
あるいは手直しして、何年でも使っている。
いつからかわたしにまで、その習慣がついたみたいだ。

楽譜たてを、太陽の下に干しながら、
さっそく次の、「衣装づくり」にうつる。
大須で買った「古帯」を、タイトスカートにするのだ。
それから「とめそで」で、トップも作る。
「380円のはらまき」で首飾り、
「250円の足首カバー」で手首飾りと、アクセサリー類も充実!

この和洋折衷、色とりどりの
まるで「歩くチベット寺院」みたいな衣装は
来週はじまる新企画「2013年のもも衣コレクション」で、
写真といっしょに、紹介していきたいと思います。

 

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「物もちのいいベラ」への3件のフィードバック

  1. 新企画「2013年のもも衣コレクション」。いいねー。

  2. ありがとうございま~す!
    「もも衣コレクション2013」来週からスタートです。
    「もも衣」のポイントは、格安で入手した古着や大安売り品を
    「手作りリメイクして衣類」にしてしまうところです。

    「これはほんとに、もと腹巻きなのか!」
    「帯をスカートにしてしまうとは、何なんだ!」
    という、とんでもなさがいいのですね。
    それに何より安い!
    あっ、かかった制作費も、書きますかね。

    応援されると、すぐその気になっちゃう。体育系だから。
    それとも、さる年だからでしょうか(笑)

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