「衣がえ」は一番広いアトリエで行う。試着するたびにオウムが足元にまとわりつき危ないので、軽く足蹴りして追い払う。
ぶつぶつ言いながら、クローゼットのある寝室へと歩いて行くオウム。
「あ〜よかった。これでやっと落ち着いて試着&仕分けができる!」
何がよかったのか。その結果はわずか一時間後に「とんでもない事態」としてもたらされた。クローゼットの間をオウムが我が物顔で飛び回っているではないか。
「だめ〜、どいてどいて!」
また軽く足蹴りにする。なにしろ両手は山のような衣類でふさがれているのだ。
そして。よく見ると。「真っ白な引き出し」にぶつぶつと茶色い模様が浮かんでいる。
「なに、これ・・・」
近づいてわかったが、それは「はがされた塗料」のあとなのであった。
「うそ。これ全部、噛みついてはがしたの?」
オウムの顔は、そうだと言っている。さらに。衣類を引き出しの中に入れようと近づくと、ものすごい勢いで攻撃してくるのだ。
これは「自分の巣だ」と言わんばかりに。あぁあ。掃除する気にも、ハゲた部分を白の塗料でペイントする気にもなれず、お茶でも飲むことにした。
「なんで仕事を増やすのか」
そうつぶやいた瞬間、亡き母の言葉を思い出した。
「ももちゃん、何もしなくてもいいよ。仕事が増えるから」
歴史はくりかえされる。まさか、こんな形で。