私は「素材」に弱い。ホームセンターや文房具屋、布屋などを見つけると、すぐに吸い込まれてしまう。
そして。なかなか出てこられない。なぜならそこには必ず「新しい素材との出会い」があるからだ。
私たちアーティストにとって「素材」はイコール「可能性」。なので、見ているだけでむくむくと想像が膨れ上がってくる。
「これはこう使えるのではないか」
ただそれだけのことが、寝ても覚めても。いてもたっても。に発展するのだから、自分でも驚く。いや、あきれる。
そこにあるのは純粋な創作の欲望、衝動なので、ほとんど「割の合わないこと」が多い。経済的には、まったく。
困ったことだが、20年前スペインへ渡りピアニストになると決めた時に
「これからは自らの内からあふれる衝動、情熱、エネルギーに忠実に従って生きよう!」
と決めたので、私にとってアートは「仕事」でなく「生き方」。損得ではなく、自分の生き方をひたすら貫いてきた。どんな時も。
収支を計算して動くのは、ビジネス。甘いと言われようが、自分の信じるものを作り、結果としてなんとか収支が合えば、それでいいと思う。
そして。もし、収支が合わなくても。
自分の生き方を貫いた、という宝物が残る。人生一度きり。アートに命を注ぎ、アーティストとして生ききってみたい。一人の人間として命を開ききってみたい。
そして。一見「割に合わない」ことばかりの私の人生が、この先どうなっていくのか。時々外から、不思議な気持ちで眺めている。