昨日の続き。朝一番で市役所に電話をかけると、のんびりした声でおじさんが出た。
「フェリアの告知ポスターに応募したいんですけど『マラガ市役所のロゴ』は必須ですよね?」
「そうです!」
おじさんの声に急に力が入る。あぁあ。やはり。これは何としても入手せねば。応募資格から外れてしまう。
「どうやって入手するんでしょう?実は今ペイント中なんですが、ロゴを切って貼り付ける。というのではダメですよね?」
見栄えは悪いが、コラージュの一部としてなんとかできれば時間短縮になる。これからまだコラージュの仕上げに8時間。さらに文字原稿入れもあるのだ。
「今、まさに描いてる途中ですか?」
おじさんがのんびりと尋ねる。その意味するところがわからず「はい」と不安げに返事をする。
「あ〜、だったら。ロゴをまねて描いてくれればいいです」
「ええっ!」
頭を殴られたような衝撃。ロゴって、いじっちゃいけないんじゃ。だからロゴなわけで。使い方に厳密なルールがあるはずでは。
「あの、いくら真似して描いても、全く同じ。というわけにはいかないんですが」
恐る恐る尋ねる。おじさんは、のほほんとした口調で繰り返した。
「できる限り、似せて下さい」
似せる?それでは、ロゴにならないのでは?「よく見ると微妙に違う」という方がかえってまずいのでは?
おじさんののんびりとした口調が、かえって不安をつのらせる。「本当にそれで大丈夫なのか」数回確認。すると、おじさんがとんでもないことを言い出した。
「どうせ描くなら、現代版のロゴの方がいいですよ。シンプルで簡単だから。古い方は絵柄が複雑で、同じように描くのは大変です」
古い方って?まさか。あの「紋章」のこと?古城とか聖人とか海とかが描かれたあれ?周りにリボンと文字まで入って。冠かぶって。
そんなの描く人がいるの?それだけで3時間くらいかかるんじゃ。とにかく、おじさんの言葉を信じるしかない。
「では、できるだけ似せて描いてみます」
現代版ロゴをまねて、ポスターの隅にそっと描き入れる。もちろん一目で手書きとわかる。ので、とても気持ち悪い。
が。ここはマラガ。これもあり、なのかも。一抹の不安はあるが、先を続けるしかない。切っては貼り、塗っては貼り。そしてついに夜中の12時、やっと作品が完成した。
(明日に続く)