【一日一作プロジェクト】蝶や花、植物たちが野原を自由に舞い踊る「遊風(ゆうふう)」。ベストを野原に見立てて。今日の一大ニュースは何と言っても
「子供たちが遊んでる!」
思わずテラスに駆け寄ってしまった。波打ち際を走り、凧をあげる親子。自転車に乗る小学生。犬とたわむれる幼児。
今日から子供たちは、一日1回、1時間以内の散歩が許可された。もちろん親の監視のもと、いくつもの条件が課されている。それでも
「声を上げて走る子供たち」
の光景は、実に1ヶ月半ぶり。なんというか、あまりに突然湧いて出たようで
「映画のワンシーン」
のように見える(笑)。この光景が一日も早く「あたりまえ」になりますように。そんな事を願いながら、ずっとほったらかしだったベストを完成させた。
まったく着る予定はない。なにしろ外出は完全装備。身軽ですぐに洗えるスポーツウェアが、今年の私のメインファッション。そしてここ1ヶ月、私が大の苦手としている
「ほかっておいたことを完了させる」
毎日と向き合っている。なにしろ新しいものを始めたくても材料がない。私の目はアトリエの中をぐるぐるとめまぐるしく動き回る。毎日。何十回も。
「何かないか」「何かできないか」
あるものを使って「何かを生み出す」集中トレーニング。外出禁止令が続く限り敢行のつもりで始めた「一日一作プロジェクト」。
「まさかこんなに延長されるとは」
正直思っていなかった。どうも最近、朝起きて「今日は何を作るか決め、作業に向かう」のが、毎日のリズムになりつつある。
友人が3月に「引越し」を予定していたら、いきなり外出禁止令(封鎖システム)に大当たりし、延期を余儀なくされた。
別の友人は「手術」を予定していて、こちらも延期。突然のコロナ襲来で、延期になるものは数知れず。
「まるでメドが立たない」「予定は未定」
が、日常化してきた。それでも段階を踏んで少しずつ、封鎖を解除していく準備をスペイン政府は始めている。
子供たちが走ると、風が吹く。その風が、笑い声を含んで舞い上がり、私のいるテラスまで届けられた。「遊風」。祈りを形に。