13.そうじ、しました

ベラの「日本語レッスン」の上達の成果は、
両親との国際電話で、毎週、確認されている。
「もも~、電話の時間だよ!」
ベラが、モップで床掃除をしながら、うれしそうに言った。

「今日は、いい天気です。ぽかぽか。
お仕事がんばってください。おさんぽ?・・・」
掃除しながら復習している。
「ほおぉ~」
いつのまに、こんなことができるようになったのか。

「とみ子さん、お元気ですか?豊橋、ぽかぽか?」
時候の挨拶もできるようになり、
やれやれと胸をなでおろしていると、突然、受話器に向かって
「わたしは、そうじを、しました」
と、自慢げに告げた。そして、次の瞬間
「ももは、そうじ、しません!」

仰天したのは、わたしの方で、両親は大爆笑していた。
「それって、告げ口って言うんだよ」
と言ってやるが、ベラはモップを手に
「おそうじ、おそうじ♪」
と、念仏のようにくりかえしている。

いったい、日本語学習を始めてよかったのか。
先生として、くらっとする一瞬であった。

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