手続き問題・21

【一日一作プロジェクト】2022年の作品を紹介中。「手続き問題・21」。2023年9月。10月半ばに

「私は日本へ、ココは動物病院へ」

行くことが決まった。衛生証明書の新しい書式が決定されるのに、数ヶ月から半年。運が悪ければ1年かかる。つまり、

「2024年の1月〜3月まで、できることは何もない」

動物輸出入業者のMさん、動物病院のA先生が、私の日本帰国中、ココを支えてくれることになった。いったん情報を整理し、心身を休め、次の戦に向けてエネルギーチャージ。休戦。仕切り直し。

「おもちゃを作ろっか〜」「ぷぷぷっ」

さっそくココが飛んでくる。素材をベッドの上にどばっと広げ(そこしか場所がない)、ヒモ、コルク、鈴、クリップ、カートン、洗濯バサミなどのパーツを組み合わせる。つついたり、ひっぱったり、壊したりできるように。

「50個もできたよ〜」「ひゅーいっ」

これまで20年間、おもちゃはいつも2人で遊びながら作ってきた。大喜びでパーツとたわむれる姿を見ていると、息がつまりそうになる。まさかあと2週間で再び離れ離れになるとは、ココは思ってもいないのだ。

「抱きしめてあげられないことが、見つめ返してあげられないことが、名前を呼んであげられないことが」

辛い。そばにいてあげられないことが。私は希望と絶望の間を、1日に何度も行き来する。ココが「置いていかれた」「捨てられた」と感じないよう、必死でおもちゃを作る。

「これは、私だよ」

と、伝えてあげたかった。ひとつひとつに思いを込める。祈りを。私はこれほど、祈ったことがあったろうか。この小さな、羽の生えた生きものが、私の家族になった日から、

「大きな歓びと、小さな悲しみが」

始まった。一緒に生きる幸せと、喪失の恐怖。たとえ2度と会えなくても、ココが幸せなら私はかまわない。でも、全てに「ノー」を突きつけ、ココは私といることを選んだ。全力で。命をかけて。

「新しい衛生証明書で、日本入りする第1号は私たちだよ!」「ぷぷぷっ」

最後まで闘うと決めたのだ。今、自分にできることに集中しよう。1日がかりでおもちゃ作りが完了し、次は荷物の整理。日本一時帰国といっても、旅ではなくマンション退去なので、いわば引越し。部屋を空っぽにしなくてはならない。

「荷物預かってもらえる?たとえ小袋ひとつでも」

友達に尋ねまくる。小分けにすれば、引き取り手も増えるはず。その分、引き取るのは大変だけど、今はこの荷物を何とかするのが最優先。すると、ダンス仲間のグロリアが、

「全部うちで引き取るよ。任せて。車で取りに行くから」

なんと娘さんと駆けつけてくれることに(涙)。ありがとう〜。楽しいことも、つらいことも。友達がいるからこそ。私は乗り越えてこられた。グロリア、クリスティーナ、カルメン、ハビ吉・・・みなさん、本当にムーチャス・グラシアス!

「ココをクリニックに連れて行くなら車を出すよ」

頼んでもいないのに、カルメンが申し出てくれる。私が泣いたり笑ったりするのを、友達はいつも見守ってくれた。だから、いざという時、私は1人でも闘える。嵐に身を投げ、乗り込んでいける。

「友達というゆりかご」

で、羽を休めることができるから。そして、ココとの別れが迫っていた。こうして一緒にいられるのもあと数日。ぺぺの元からココを引き取ってからはや6ヶ月。慣れ親しんだマンションの一室から、私たちは再び出ていかなければならない。

「安心して住める場所を探して」

流浪の民の私たちに、安住の地は見つかるのか。(明日に続く)

 

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