手続き問題・22

【一日一作プロジェクト】2022年の作品を紹介中。「手続き問題・22」。ココとの別れが、2日後に迫っていた。

「あさっては病院だよ。いつものA先生だから大丈夫」「ひゅーいっ」

病院はキライだけど、いつもお利口さんにしているココ。それは、数十分で「終わる」「これから一緒に家へ帰る」と知っているから。でも、今回は、

「一緒にクリニックを出ることはない」

自分だけ置いていかれるとは思いもせず、無邪気に遊び回るココ。狭くても、ぐちゃぐちゃでも、この部屋が私たちのマイホーム。移動用のキャリーを準備していると、あの悪夢のような、

「行きは2人で帰りは1人」

の喪失感が、よみがえってきた。吐き気がするような。全身が震えてくるような。私の深いところに刻まれた傷あと。今なお真っ赤な口を開けた。その傷を、私は自分を駆り立てることに使う。

「片付けしなくちゃね」「ぷぷぷっ」

マンション退去まで、あと10日。荷物の片付けで、部屋は物にあふれ足の踏み場もない(写真)。テーブルの上にはランチ。そして、ココが〜。そこしか、居場所ないよね。

あたりまえに続くかのような日常。それが、再び断ち切られる。ココを、再び手離さなくてはならない。

「たかが書類で」

紙切れひとつで。ペット用の書式くらい、作っとけよ。と、腹の底から怒りが湧いてくる。一般企業なら1週間、遅くても1ヶ月で解決できること。これが「省」になると、いきなり

「お前は黙って待っておれ」「そのうち連絡がいく」

的な、一方的感。かつ、突き放され感。一般企業なら潰れとるわ〜。私たちの人生、生活のことなんて考えてもいない。何ヶ月でもゆったりと待ち続け、自由に引越しできる、財力と時間があるのは、上級国民だけですよ。

「家族を離れ離れにするルール」

なんて、まっぴら。こちらは、刺し違えるくらいの覚悟でのぞんでいるのだ。何も知らないココが、私のイスの横に座る。ちょこんと。いつものように。

「私たちはいつでも一緒」

そう信じている者を、突き放すようなルールなんて、くそくらえ。絶望や悲しみを、私は「闘うエネルギー」にかえる。勝利の女神など、どこにもいない。

「私が、勝利の女神」

「大切な者を守る」時、人は最大の力が出る。自分のことだったら、もうとっくにあきらめていた。周りの方々からも、

「あきらめた方がいいのでは」

と、何度も言われた。新しい養子縁組、保護鳥センター・・・事情を話せば、きっと引き取ってくれる所はあるだろう。でもそれは、

「ココが選んだ人生ではない」

私たちは、意志を持つ生きものだ。自分の望むこと、信じることを貫きたい、生き抜きたい。そして親なら、子供の望むことを全力で支え、守り抜きたいと思う。クリスティーナが私をそう呼ぶように、

「ロカ(クレイジー)」

でよかった。ロカに常識は通用しない。立ちはだかる壁の高さなど、問題ではない。突破口を見つけ出せるかどうか。それだけ。ロカが腹をくくったらどうなるか。見ておれよ〜。

「一点突破」

希望と怒りの炎だけで、私は立っていた。(明日に続く)

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