手続き問題・24・みみよよ

【一日一作プロジェクト】「みみよよ」を紹介中。「手続き問題・24」。ココと一緒にいられる最後の日。クリニックへ行く前に

「最後の朝食を食べる」

これが、明日もあさっても続いたら、どんなにいいだろう。何も知らない無邪気なココを眺めながら、胸がいっぱいになる。これまで、あたりまえに続いていた日常が断ち切られる悲しみ、痛み。思えば、

「涙を飲み込んで、笑顔にかえる」

100本ノックだった。「手続き」という名のもとに、打たれ続けて。それで性格が変わることはないが、私の内面はかなり変わった。「ノー」と言われること、1%の可能性にのぞむことが、

「ご飯を食べるの同じくらいふつうのこと」

になった。心のどこかで「ノーと言われてからがスタート」だと思っている。前なら、傷ついたり迷ったり不安になったりしたプロセスが、私の中から抜け落ちている。

「ぷぷぷっ」

ココが引き出しで遊ぶ。自分の大切なテリトリー。遊び場であり、ひと休みするバルコニーであり、寝室でもある。この引き出しで遊ぶのも、これで最後。私は重い腰を上げる。ついに、その瞬間が来た。

「さぁ、出かけるよ」「ひゅ〜いっ」

どんなことをしても、時間を止めることはできない。だったら、できるだけ楽しく心穏やかに。ココは隔離されるんじゃない。これは、バケーションの長期ホテル滞在。3食昼寝付き。冷暖房完備。ドクターによる健康チェック付き。

「VIPやん」

こうしている今も、カルメンが車で待っていてくれる。お抱え運転手付き。感謝こそすれ、嘆くことは何もない。右手に移動用ケージ、左手におもちゃや食事の入った大袋を下げ、部屋を後にする。

「もう2度と戻らない」

その感覚は、いつも私の胸をしめつける。カルメンにハグされ、一気にスイッチが入る。笑いかける人がいるから笑顔になる。

「こんな悲しい日に、一緒にいてくれてありがとう!」

これ以上、恵まれた環境ないよね〜。ケージの中のココは少し緊張していたけれど、私たちの声が笑っているのを聞いて、すっかり安心しているようす。15分ほどでクリニックに到着。

「待ってたよ〜」

ドアの向こうから、ドクターが現れる。いつものくったくない笑顔に感謝。辛い時、不安な時、心からの笑顔が心に沁みる。

「これがベスト」

今の私たちの。全力を尽くして、私たちはここまでたどり着いた。望むものは手に入らなかったけれど、これができる限りの、最高の結果。それを、受け入れよう。

これから最後の打合せ。ココが新しいケージに慣れてくれるよう、まだやることがいくつもある。さらに書類やサインも。その現実が、私の悲しみにフタをしていた。(明日に続く)

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