【一日一作プロジェクト】「大画2024」を制作中。「手続き問題・29」。「輸出許可証」の更新申請はしたものの、
「ただ祈るしかない」
発行まで3ヶ月とも半年とも。その果てしなさ、無力感に絶望した私は、絶滅危惧種の輸出許可証を発行するスペイン唯一の機関Citesへ、個人的に手紙を書くことにした。動物輸出入業者からの進捗状況確認メール、発行催促メールではなく、
「自分の言葉で、自分の思いを伝えたい」
私たちが置かれている状況。2023年の4月から私たちが闘っていること。衛生証明書の書式が決まるのを待つ間に、輸出許可証の期限が切れてしまったこと。その衛生証明書の発行が今まさに可能になりつつあること。
「今動かなければ」
鳥インフルエンザが発生した時点で、スペインからココは出られなってしまう。すでに5ヶ月、ココは動物病院の鳥かごの中に閉じ込められている。心身のストレスで死ぬ鳥だっているのだ。この書類1枚に、ココの命が、私たち人生がかかっている。
「私たちには時間がない。今動かなければ、再び国境が閉ざされてしまう。どうかお願いします!」
読んでもらえるかわからない。なんせ相手は政府機関。でも、私たちが命をかけて闘っていることを、どうしても輸出許可証が必要なことを、自分の言葉で伝えたかった。書き終えた瞬間、涙がこぼれた。
「私にできることは、これしかないのか」
その無力感。政府機関である以上、返事がなくてあたりまえ。それはわかっている。ましてや個人的に返事がもらえるなんて夢物語だ。それでも、祈らずにはいられなかった。
「どうから読んでもらえますように。心ある人の目にとまりますように!」
全てデジタル化されたために、事務所に駆けつけることも、電話で尋ねることもできない。個人的に手紙を送ったことを、お世話になっている動物輸出入業者とマラガの関連機関へ報告すると、
「読んでもらえるといいね」
と、みなさん口調は優しかったが「それで、ももの気がすむのなら」的な、あきらめの空気が漂っていた。そして、私はすぐにスペインへ飛んで行く準備を始めた。
「まずはチケットをゲット」
したいところなのだが、流浪の民の私はまず「住む場所」を確保しなければならない。なにしろどれだけ滞在するのか、まるで先がわからない。政府の言いなりで動くしかなく、全く計画が立てられない。それでも、
「友人がルームシェアを募集してるよ」
とダンス仲間のアンドレが、すぐに女友達を紹介してくれた。さっそく連絡すると「3月中旬からなら大丈夫」とのこと。すぐに予約。宿を確保できたので、マラガまでのチケットを購入。
「ココが待ってるよ〜」
動物病院の先生から動画が送られてくる。「今日のおやつはキウィ」と先生が差し出すや、奪い取って放り投げるココ。「あぁあ〜」と先生の嘆きの声が〜。そこで動画が切れ、
「仲よくやってます」
って、先生(笑)。こんな動画で笑わせてくれるおおらかさに感謝。この5ヶ月間、動画が送られてくるたび、何度も何度も再生して、ココの表情を、動きを見つめた。変わりはないか。心と体は大丈夫か。
悲しみを痛みを、勇気と情熱にかえて。まさに、その100本ノック。いよいよステージは再びスペインへ。今度こそ、扉が開かれますように。スーツケースを準備していると、スペインからメールが届く。何気なく差出人を見て仰天。
「えええーーーーっ!」
なんとあの、私が長い手紙を書いて送った「絶滅危惧種の輸出許可証を発行するスペイン唯一の機関Cites」から。まさか1週間で返事をもらえるとは。喜びと共に、一気に不安が押し寄せる。どんな内容なのか。YESかNOか。
「この返事に、全てがかかっている」
その事の重さに、しばらくメールを開くことができないでいた。(つづく)