【一日一作プロジェクト】「文字パーツ」を作った。手続き問題・36。いよいよ日本帰国が迫る。またしても、
「ココをクリニックに残して」
いかねばならない。今度こそ、ここから出してあげられる。一緒にいられる。と思ったのに。たとえ、チーム一丸となって「ココを日本へ!」。全力で手続きを進めているけれど、当の本人は何も知らず。
「どうしてここから出してくれないの?」「迎えに来てくれたんじゃなかったの?」「また僕を置いて行っちゃうの?」
スペインを発つ前日、クリニックを訪れるとココは悲しげな声を上げていた。蚊帳の中で。もうケージから出すことも、頭をなでてあげることも、抱きしめてあげることもできない。
「ココ、日本で待ってるからね。長旅だけどがんばるんだよ」
いつものように笑いかける。歌をうたい、蚊帳越しに一緒に踊り、新しいおもちゃを見せて。ココと最後の時間を分かち合う。どうか全てうまくいきますように。次にココに会うのは日本。そう信じたい。
「先生、ココの体調は大丈夫ですよね?」「パーフェクトだよ。タフでマイペース。周りに全く流されない。気に入らないと完全スルー」
「どんな育て方したの?」とA先生が笑う。3週間後にクリニックで行われるスペイン政府との最後の打合せも、A先生が行ってくれることに。全てを安心して任せられるからこそ、ココを残して日本へ旅立てる。
書類の最終確認をしていると、ピンポーンとドアが鳴り、50代の男性が入ってきた。なんと、肩に緑色のオウムを乗せて。
「やぁ、マルティン!」「うちの子を診てくれる?」「こちら、もも。ココのお母さん」「おぉお!やっと迎えに来てくれたんだね」「あっ、まさかあなたが⁉︎」
この男性こそ、ひとりぼっちのココをかわいそうに思い、用事もないのにクリニックを訪れ、ケージの横にイスをおいて、1時間も2時間もココと遊んでくれた方!
「マルティン!ムーチャス・グラシアス」
なんという偶然。オウムが紡ぐご縁。マルティンはスマホを取り出すと「うちの子たちだよ〜」と、5、6羽のオウムがリビングでのびのび暮らしている写真を見せてくれた。みんな幸せそう〜。
「万が一、何か問題があったら。僕がココを世話することもできるから」
マルティン、本当にありがとう。いざという時に頼れる人がいる。その心強さ。この世の中に私たちのことを心配し、何とかしてやりたいと思ってくれる人がいる。A先生、Mさん、マルティン、日本大使館の女性の方、カルメン、クリスティーナ・・・
「これはひとつのチーム」
なのだ。同じゴールを見つめ、ひたすら前進あるのみ。これまで半年間「ノー」の連続で、どこへ行っても受け入れでもらえず、
「ココと2人、消えてしまいたい」
と思ったこともあった。それでも、ここまでたどり着けたのは、心ある人たちの思いやり、行動のおかげ。この運に乗る!A先生、マルティンとしっかりハグをして、クリニックを後にする。
「ココ!日本で待おうね」「ひゅーーーいっ!」
21日間以上の隔離が終わったら、スペイン政府の職員(獣医)による隔離の完了確認→スペイン政府が発行する衛生証明書の取得→それを日本政府に送り、内容を確認。実はこの最後の確認で、かなりの
「ダメ出し」
にあうらしい。少しでも表記が違うとやり直し。やり直し、ったってちゃちゃっと書き直せばいいのではない。スペイン政府へ修正の申請、書類、サイン・・・とまた新たな手続きが〜(涙)。とにかく、
「スペイン政府との日本政府の両方からOKをもらって」
初めてココを飛行機に乗せることができる。スペイン政府の対応は、A先生と動物輸出入業者のMさんが。日本の厚生労働省機関、動物検疫所、税関などの対応は私が。
「最終章は日本とスペインで同時進行」
ついに、最終戦。マラガの海と空に元気をもらい、日本へと向かう飛行機に乗り込んだ。(明日に続く)