手続き問題41

【一日一作プロジェクト】「立体アートパーツ」を制作中。「手続き問題・41」。カタール空港から連絡を待ちつつ、東京行きの準備。何より大切なのは、

「書類、およびココを入れる移動用ケージ」

実はこのケージ、わざわざスペインから持ち帰ったもの(写真)。3辺の合計が「100センチ以内」のミニサイズなので、

「あらゆる公共交通機関をパスできる」

その上、やや高さがあり(犬猫用は横長)かなり頑丈。成田空港へ着いたら、動物検疫所、貨物施設、税関・・・と次々回らねばならず、荷物は最小限に。必要書類を再確認していると、

「振り替え便が決まりました!」

カタール空港から連絡が入る。それもなんと。翌日の午後便に動物貨物の空きがあるとのことで、すぐに手配をしてくださった。

「オウム君も早くおうちに帰りたいですよね」

おぉお。感謝(涙)。便名と到着時刻が決まり、すぐに成田空港の動物検疫所へ連絡する。日本に到着するのが夜中近いので、その日は空港内の「保管施設に1泊させてもらえないか」お願いすると、

「それは別の機関が担当します」

と、別の会社を案内される。すぐに連絡を入れ「宿泊と食事のサービス」を申し込む。そこで、初めて知ったが、

「飛行機で外国から届いた貨物は全て、その会社に届く」

ココもしかり。私が成田空港に着いたら、最初にめざすのはその場所なのらしい。住所は成田空港になっているが、いわゆる旅行客が利用するターミナルと違い、空港駅から歩いて15分ほど離れた、

「特別区」

の中にある。もちろん一般人は入れない。ゾーン全体が柵で守られ、中に入るには手続きが必要なのらしい。このセキュリティゾーンの中に、私がめざす全ての機関(保管施設、動物検疫所、税関)がある。ことを、初めて知る。

「どこにあるか、どうやって入るか」

説明してもらうも、まるでぴんとこず。だいたいふつうの人は、空港って言ったら旅客ターミナルしか知らんぞ〜。

「とにかく探して行きます」「迷ったらお電話ください」

少なくとも、そこは会社であって、日本政府ではない。電話で応対してくださる女性の口調も、庶民的で温かい。多少の融通ならききそうな雰囲気が伝わってくる。

「オウム君が着いたら連絡しますね」「よろしくお願いします」

夜になり、ココが無事に成田空港へ着いたこと。保管施設内で元気にしていることが伝えられる。これで、やっと安心して眠れる。ここ数日、心穏やかに眠ったことがなかった。

翌朝、東京へ出発。新幹線、成田エクスプレスを乗り継ぎ、成田空港へ。ふだんなら出発ターミナルへ行くのだけど、今回は「特別区」へ。空港駅から誰もいない廊下を進み、外へ出る。

地図を見ながら15分ほど歩くと、柵が見えてきた。セキュリティのおじさま達が数人、こちらを厳しい目で見つめている。よろよろと吸い込まれるように近づいて行くと、

「どこに行かれるんですか?」「オウムを受け取りに来ました」「こちらの書類にご記入願います」

さくさくっと手続きが完了。首から下げるカードを手渡される。帰りに退出手続きがあるので、戻って来るよう指示される。特別区は広いが、出入口はここだけ。なかなか厳重な警戒体制。もちろん写真撮影も一切禁止。

「まずは、第一関門突破」

再び地図を見ながら、貨物の保管施設を探す。とにかく特別区では、全ての建物がなんらかの機関。お店と違って看板も出ていないので、とてもわかりづらい。迷いながら、やっと窓口へ到着。

「オウムを受け取りに来ました」「まずはこちらの書類に・・・」

とにかく書類。ひたすら書類。全てはココを受け取るため。窓口を回り、書類をかき集める。第二関門突破。ココはこの建物のどこかにいるのだろうが、全ての手続きが終わるまで、会わせてはもらえない。

「書類を手に、次は動物検疫所へ」

いよいよ本日の手続きの最難関。ここで「衛生証明書」「輸出許可証」をはじめ、全ての書類が厳しくチェックされる。政府機関なので、容赦なし。のはず。

「お腹すいたな〜」

緊張感の中でも、お腹は勝手に鳴る。朝もパンひとつだったし。辺りを見回すも、ひたすらビル。飲食店などありそうもない。「今日は昼食抜き」とあきらめ、動物検疫所の入る建物へ一歩足を踏み入れると・・・

「ビルの1階がコンビニ」

おぉお〜。なんという幸運。ささっとランチ。エネルギーチャージ。ふだんはコンビニのものは食べないのだけど、非常事態時にはやはり便利。ありがたや。トイレ休憩をし、大きく深呼吸をしてエレベーターに乗り込む。

「どうか私たちをお守りください」

ついに、来た。私は「動物検疫所」のドアの前に立っていた。とうとう。ここまで。2年がかりで。長かった。遠かった。何度絶望に突き落とされ、ここにたどり着くことはもうない、と思ったことか。

2年に渡り、500通近くのメールを送り続け、その大半は「ノー」だった。が、最後が「イエス」ならそれでいい。私たちの運命を握っているのは、この場所なのだ。最後の審判。

「ここで『ノー』だけはやめてくれ」

どうか、最後だけは「イエス」で!天に祈りながら、ドアを開けた。(明日に続く)

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