ニッポン帰国のこと・4

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母が亡くなったことは
つらかったが
私は一人ではなかった。

何より父がいたし
私たちにぴったりと
寄り添って支えてくれる
敦美お姉さんや
秀兄ちゃんが
ずっといっしょだった。

日本の葬祭に
うとい私にかわって
敦美お姉さんは
てきぱきと動き回り
また明るい会話で
和やかな雰囲気を
作りだしてくれた。

栃木県からは
明おじさん、しずこおばさん、
みどりおばさん、康おじさんが
駆けつけてくださった。

こんな機会であるのは
残念だが
何十年ぶりに顔が見られて
話ができてうれしかった。

父の肩のホコリを
払ってあげる
明おじさんの手が
とても印象的だった。

父のことを思って
くれているのが
しみじみと伝わって来る
いい光景だった。
「ああ、兄弟なんだな」
と思い
私は急に、父の在所である
栃木県に行きたく
なってしまった。

「父が生まれ育ったところを
見てみたい」
それも父が生きているうちに。
いっしょに歩いてみたい。

それは私が生まれて初めて
感じる強い思いだった。
早いうちに実現
させたいと思う。

告別式が終わり
家に帰ると
去年ベラが大騒ぎして
購入した「アロエべラ」が
すくすくと育っていた。

父の話だと母が
「ベラのかわり」に
それは大切に育ててくれて
いたのらしい。

お世話になっている方々への
連絡もほぼ終わり
やっと落ち着いた父と私は
二人で「すき焼き」を
作ることにした。

作り方はマラガで見ていたので
なんとかなるであろう。
果たして結果は。

「おいしー」
この年にになって
初めてすき焼きを作る
というのも情けないが
すばらしい出来栄え。

年が明けると父は
慣れない手つきで
雑煮を作っていた。

「お母さん、お雑煮ですよ」
おせち料理といっしょに
父が祭壇の前にお膳を運ぶ。

父にとっても
新しい2016年が始まる。
私もこれから
スペインで一人暮らし。

赤ワインを飲みながら
父と娘の「栃木県旅行」を
近い将来ぜひ実現させたいね
と、話し合った。

(明日につづく)

 

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