毎朝、オウムは日の出と共に雄叫びをあげるようになった。
「ギェーーーーーーッ」
マンション中の住人をたたき起こす大音量なのに、なぜか起きてくるのは私だけだった。
当然オウムは私に朝食を要求する。
「これが3,000ペセタ(約2,500円)の理由か…」
わかったときにはあとの祭り。
その日以来オウムは
「ギェーッ、ギイギイ、ガー、グェー、ギャン」
とガ行で自慢ののどを披露。
私はといえば、何とかこの鳥を黙らせることはできないかと鳥カゴの周りをウロウロ。水やエサをとりかえようと鳥カゴの中に手をのばそうものなら、恐ろしい形相でつついてくる。
「ひぇーーーーーっ」
ペットショップの店員は
「それはもう人といるのが大好きなんですよ」
なんて言っていたのに。
日がたつにつれてオウムは私ひとりになつくようになった。
エサからそうじ、おもちゃ、羽そうじまで何でも私に要求する。
鳥カゴから出してやると、あらら、こわがることもなく私の肩にのってくる。
一日中でも肩やイスや鳥カゴで幸せそうにしているので、カゴの扉はとってしまい、
自由に出たり入ったりできるようにした。
「オウムって、人を選ぶんだよね」
ようやく起きてきたベラがぼそりと背後でつぶやく。
それ以来、オウムが鳴いていると
「ママパハロー(お母さん鳥)、 呼んでるよ!」
と私に声がかかる。
“料理人”、“飼育係”、そして今や“オウムの母”となってしまった私は
“名付け親”の権利を与えられ、
「うーん、じゃあ、“チュッピー”にしよう !」
私を見つめるチュッピーの丸い目。
「ああ、この子はもしかして来月、私の仕事がないかもしれないなんて考えもしないんだなあ。そして自分がどうなるかなんて これっぽっちも思わない。
今日、ごはんをおなかいっぱい食べられてうれしい。
私といられてうれしい。そのくり返しなんだ!」
だったら私も!
今日ごはんをおなかいっぱい食べられてうれしい。
太陽の日差しを浴びてうれしい。
チュッピーといられてうれしい。
編曲ができてうれしい。
ベラ、エルネスト、ソニア、リト… 沢山の仲間たちに支えられて生きていることがうれしい。
ピアノが弾けてうれしい。
生きていられてうれしい。
私はチュッピーのために庭をつくることにした。
ユーカリの大木を拾ってきて、植木鉢にさして固定し、
枝々に コルクやまつぼっくり、レタスやリンゴなどをくっつける。
そうマラガ下町コミュニティ生活の基本は
“買う”ではなく“あるもので作る”。
チュッピーは一日中そとで遊んでいたが、私たちが演奏着に着がえるのを見ると 、
とたんに静かになり
「遊んでー!」
と前のようにさわぐことがなくなった。
仕事に行くとわかっているのだ。
「なんておりこうな……」
そのけなげさにぐっと胸をつかれ
「マミー(お母さん)、がんばるからね !」
体中に力がみなぎってくるのだった。
ももさん、ラジオの出会い最高にハッピーでした。
後ろから「チュッピー」の唄声もセットで贅沢な国際放送?でしたね。改めて、あの時スタジオからお話しさせて頂いたDJshinです。
連載からずっと毎話楽しみにしています。
昔よく読んだ文庫本のエッセイのような、
ライトな文章がとても心地よく。
僕はももさんの声を聞いたので、
今は文章がももさんの声になって聞こえてくるんですよ、
不思議なモノですね。
僕もももさんの程ドラマティックではないけれど、
「生きる」という単純な人の営みを強く感じたときがありました。
たまにベッド(いや,,,布団です:笑)の中で、
「布団で寝られてなんて幸せなんだろう!」と思ったり。
いつか、LIVEでももさんの暮らしを見てみたいモノです。
にしても、チュッピーのガ行だけのコンサート。
是非それも拝聴したいです。
また、たまにコメントさせて頂きますね。
shin
(momoからコメントが届きましたので転記しますね。)
shinさん、心温まるコメントをどうもありがとう。一回ラジオを通して話をしただけなのに、私もshinさんの文章を読むとshinさんの声で聴こえてきます。喋りやっていう肩書きがいいね。ベッドを布団と言い直すとこ。笑えました。momo