写真総数、1500枚。
その、悪夢のような「仕分け」が始まった。
今回、You Tubeにのせる曲は、全13曲。
そのための写真を
「曲ごとに撮って保存してくれてれば、楽だったんですけどねぇ」
「・・・・すみません」
申し訳なくて、文字どおり頭が下がる。
うちのピアノ教室の生徒の、そのお父さんであるアルミンさんは
信じられない「忍耐力」をお持ちだ。
まず、1500枚を半数にセレクト、さらに曲の雰囲気にあわせて
「ファイル作って、保存していきましょう!」
と、笑顔である。
いくら自営でフリーランスとはいえ、アルミンさんの職場に何度も
「あの~、今日、時間ありますか」
と、現れるわたしに、いやな顔ひとつせず
何時間とパソコンの前で、いっしょに肩を並べてくれる。
わたしも操作を教え込まれ、何時間とマウスをいじっていたら
「あいたたたっ・・・・」
右手の甲が痛くてたまらない。
人差し指と中指につながる筋が、つってる気がする。
「気をつけて!腱鞘炎になりますから」
「けんしょうえん?」
ピアニストが腱鞘炎といえば、まず「弾きすぎ」だろう。
毎日8時間の猛特訓とか、
激しいタッチ、重い鍵盤での練習などが原因であり
まちがっても「クリックのしすぎ」では、ない。
「あいたたたっ・・・・・」
翌日、ホテルでは仕方なく、右手の甲をさすりながら、
ふうふう息を吹きかけては、
無理な動きをしないよう、気をつけて弾いた。
なんせ明日は、大切な残り6曲の「仕分け」が待っているのだ。
「やった~!」
「できましたね」
「うれしい~っ!」
アルミンさんと両手で握手。ついに、写真の仕分けが完了だ~!
歓びで、手の甲の痛みもふっとぶ。
「あとは、タイトルのクレジット入れだけですね」
「がんばりますっ」
わたしたちは、マテ茶をチューチュー吸いながら
しばし無言で、お互いをねぎらった。
喜んで家に帰ると、べラがおなかをすかせて待っていた。
「写真整理、終わったよ~!」
「おつかれさーん」
台所に向かうが、なんとなくめまいがする。
耳の奥が刺すように、痛い。なんとか我慢して料理を作るが
夕食を食べようとしても、ものを噛むたびに耳に激痛が走り
とても食事どころではない。
「いたあぁああ~っ、痛いぃっ!」
ついに我慢できなきなり、ソファの上を転げ回る。
痛みは、夜半にかけてどんどんひどくなる。
そしてついに、
「うぎゃあ~、耳が聞こえないよぉ~!」
今や、左耳は完全にふさがり、難聴になっていた。
「病院行く?」
「ケッ?(なに?)」
「救急に行こうか?」
「ケ、ケッ?(な、なに?)」
突然、耳が遠くなってしまったわたしに、べラが顔色を変えた。
「どうしよう、あさってYou tubeの残りの曲、録音の日だけど・・・・」
しかしそのつぶやきは、当然、わたしの耳に届くことはなかった。
(You tube作り(4)につづく)
昨晩、わー、ももちゃんのYoutubeだーって喜んだのもつかの間、難聴とは、どういうことなのでしょうか。Youtubeの続きが恐い・・・。