今日から始まる「ニッポンへとへと記」。年末年始に日本帰国した時のことを、連載でお届けします。
まず、「へとへと」は、スペインを発つ前日からすでに始まっていた。「明日は国際線で十四時間に渡る長旅」というのに、まだオウムのえさを買ったり、電気代を払いに走ったり、ピアノレッスンの合い間にブログを予約入力、ゴミ捨て三往復。など山のようなリストをこなし、スーツケースを引っ張り出したのが、やっと夜の八時過ぎ。
なんとか荷作りを終え、ベッドに入ったが体がだるく、夜半すぎからなんと、ついに発熱!翌朝、スーツケースをひきずりながら空港へ。すべてが重い。荷物も、自分の体も。まずはヘルシンキ行の飛行機に乗る。が、まったく食べれず。朝食はジュースのみ。
次にヘルシンキで名古屋行の飛行機に乗り換える。が、こちらもランチはまったく食べれず。いつもなら食前酒に始まり、映画など見ながらバカンス満喫、のはずなのに。もちろん、名古屋空港着前に出される朝食もパス。
このあたりで「へとへと」度は一気に上昇。なにしろ「徹夜&食事抜き&発熱中」で、体の置きようもないつらさ。そして!飛行機が空港着陸態勢に入ったその瞬間、いきなり体中から一気に汗が噴き出した。それがもう、シャワーのように。いったいどうしたいうのだ。
後から思えば、これは私の「ニッポンを着きたい!」という強い思いが、そうさせたのだった。
「早く、実家で寝たい!」
その祈るような気持ちが、無意識に「体を日本入国に向け」整えたのだ。大量の汗をかき、体温を下げ、空港の「体温コントロール」をパスするために。
おかげで、へとへとながら無事ニッポン入国。「ここまで来れば!」と安心して「名鉄」乗り場へ。これから実家のある豊橋まで一時間。
「あぁあ、ベッドはまじかだ!」
よろよろと切符売場へ近づき、窓口のお姉さんへお願いする。
「豊橋まで一枚。指定席のミューチケットもお願いします!」
私は名鉄が好きだ。愛知県人ならきっと誰でもお世話になっている。便利で早くて本数も多いし、指定席のミューチケットまである。すばらしい。
が、それは「使える」から、そう思うのだ。
「お支払いは現金のみです、そこに書いてありますよね」
「ええっ、カード使えないんですか!空港にありながら?」
そう、私は「日本円を一円も持たずに」日本へ来てしまったのだった。スペインで始まった「へとへと」は、私からこんな当たり前のことを考える思考力をも奪っていた。
「そんな・・・いったいどうしたら」
呆然と立ち尽くす私の目のはしに、「空港ホテル」の標識が怪しく映った。
「ホテルなら、カードが使える!ここなら今すぐ寝られるんだ」
そう、寝ることしか考えていない。こういう自分に久しぶりに出会い、「問題解決能力」がすっかり奪れていることを認識。ふだんならすぐに
「ユーロを日本円に換金する」「カードが使える方法を探す」
など次のステップに移っていけるのだが、この時の私の一大関心事は
「どうやったら眠れるのか、歩かなくてすむのか」
だけ。
豊橋が、はるかかなたに感じられる。ふるさとは遠きにありて思うもの。
ぐらいの遠さ。名鉄に乗れない、着けないと思うと、涙まで出てくる。
しかしそれはまだ、これから始まる「へとへと」のプレリュード、前奏曲でしかなかった。
★写真は実家。庭に実をつけたレモン。レモンが大好きなべラのために 母が大切に育てていた。結局、このレモンをべラが食べることも、母が見ることもなかった。今は父がかわって育ててくれています。
あー、ももさん、そんなにつらい思いをしていたのですね。
よく倒れなかったものです。
頑張りすぎですよ。
それなのに、息子の応援していただき
感謝しています。
こちらこそ!いつも応援してくださるきむらさんに感謝しています。
名古屋でのきむらさんとの「運命の再会劇」も
ぜひ書かせていただきたいですね。
寒空の下、息子さんと肩を並べたきむらさんの姿が忘れられません。
どうぞお体を大切にしてください。スペインより応援しています。