11.私の日本大使館

名古屋三日目の夜は、伊藤さん&中岡さんと栄へくりだす。作業を終えたばかり、ドタバタしながらレストランへ。栄のラシックビルにあるイタリアンレストラン「麻布ダノイ」が、本日の会場。

「しっとり忘年会」らしく、大人の雰囲気。栄の夜景が、大きな窓の向こうにちらちら。店内もオシャレ!なんだか自分が少し「アンニュイ」に近づいた気がする。

さて、本日の料理は、すごいです。写真を見るだけで、今走って飛んで戻りたい(笑)。私の常食である「シンプル自炊食」の後に、いきなりこういう豪華なお料理を目の前にすると、いつもべラが
「慣れないものを突然、食べると体が驚いて大変なことになるかも」
と、怯えていたことを思い出す。が、私は大丈夫。ライオンだから(動物占い)。今日の狩りの日。

まずはビールで乾杯。ソムリエさんがおすすめしてくださる赤ワインをいただきながら、絶品イタリアンに舌鼓。なんだか「魚のフライ」さえもがおしゃれ。どうしてだろう。イタリアになると。

スペイン、いや我らがマラガのとは、何かがちがう。いつも思うが、日本のレストランってどうしてこんなに「キラキラ」しているんだろう。後にマラガの友人にこの写真を見せると
「おおーっ」
って、たいてい数秒、言葉を失ってくれる(笑)。こういう高級な場所にはみんな、クリスマスにしか行かないので。

さて、本日の「しっとり忘年会」を主宰してくださった伊藤さん&中岡さんは、私の元上司。で、代表取締役。十九歳の時に「アルバイト員」としてお世話になり、それからのおつきあいなので、もう三十年。当時、学生でまったく役立たずの私を
「拾ってしまった子犬」
のように、かわいがってくださった。今はリタイヤされ「世界中を旅して」いるか「釣り」しているか、名古屋で「飲んでいる」か(笑)。

思えば、二十代の時に突如
「ピアニストになりたい!」
と会社員をやめ、スペインへ渡ってから、私の生き方すべてを、いつも大きく受け止めてださった。そして会うたびに
「何か問題があったら必ず連絡して!僕たちは日本大使館だから」
と、言い続けてくれた。

私は、お二人の前で泣いたことがない。たぶん。だから、もしかしたら伊藤さんにしたら、少々不満かも(笑)。ベラと母が亡くなった後も、私は涙を見せなかった。だがらこの場を借りて、少し書きたい。

ベラを忘れてしまったわけではない。べラがいなくて平気なわけでも。そしてベラを忘れたいわけでもない。思い出そうとしなくても、べラはいつも私と一緒にいる。ただ、その思い出にどっぷりつかって生きていくのは、私にはつらい。その証拠に、私はまだ、べラのバイオリンのCDを聴くことができない。

だから、「今あるもの」に、集中する。それが、私の取った行動、選んだ道だった。明確な意識で、選び取った。だから、私の目は今日だけを見る。私の心は今日、今、この瞬間に向けられる。だから、生きてこられた。

それに、べラや母が望んでいることを、私は誰よりもよく知っている。それは
「私が笑って、人生を歩き続けていくこと」
「全力で与えられた命をまっとうすること」
「大好きなアートに、音楽に、毎日命を注ぐこと」

伊藤さん、中岡さん、これから私には今まで以上に、もっと大きな試練が待ち受けているかもしれません。でも、私には「日本大使館」と言ってくださる人がいる。最後に駆け込める場所が、ある。こんな宝物を持っているんだから、がんばらないと!

なんだか手紙のようになってしまいましたが、どうかお体を大切にして、長生きをしてください。そしていつまでも、私の「日本大使館」でいてください。また夏に、お会いできるのを楽しみにしています。

 

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