19.蒲郡と最後のランチ

昨日の続き。西浦温泉から車で約二十分。蒲郡市のシンボルである「竹島」の前へ私たちは立っていた。さっそく記念撮影(写真一~二枚目)。
「おぉお、すごく長い橋だね!」
「向こうの島に続いてるよ」
二人が小島をじっと見つめている。

「橋を渡って島へ行きたい」
などと言い出されては困るので、途中まで歩いて引き返す。なにしろ豊橋発の新幹線の時間が決まっているので、無事、二人を駅にお届けせねば。そして明日はもう、スペインに向かって出発。なのだ。

実は、きみどり家は以前この蒲郡市に住んでいたので、小さな頃はよくこの辺りで遊んだ。潮干狩りをしたり、水族館へ行ったり、市民プールへ行ったり。

思えば、私は「海」と縁がある。蒲郡市も、豊橋市も、マラガも、海を持っている。三河湾、太平洋、地中海。三つの海が私の人生の中に、心の中に広がっている。

海。それは視界のどこかに、いつも「開けた場所」を持つことだ。「はるか彼方」を心の中に持つことだ。竹島の橋を歩きながら、水平線を眺めながら、私は小学生の頃を思い出した。

あの時はわからなかったけど、海はいつも無言で
「先は見えなくとも、人生はどこまでも自由に広がっている」
ことを、教えてくれていたんだな、と思う。自由感。無限の広がり。先が見えないのは、不安ではなく可能性なのだ。

ま、だからって、ここまで自由気ままに来てしまった、というのはまた別問題かもしれませんが(笑)。

「もものお父さん、駐禁の所に車を止めてるから、早く戻った方がいいよ」
ダビーが私の耳元でささやく。本当に二人はよく周囲を見ている。
「どうしてわかるの?」
「こんな橋のたもとで、他の車が一台もないから」

今回、二人と一緒に旅をして、改めて「しっかりしている」ことを再確認。「もも、周囲をもっとよく見なきゃ」
とこの旅行中、ハビ吉は何度も私に言った。そうして、私の肩をぐっとつかみ、顔をのぞき込む。ちゃんと聞いてるかの確認。

「一度に一つの事だけ」
という超集中型の私は、芸術方面には威力を発揮するが、同時にいくつもの情報を聞き分け分析、順序だてて作業を進めていくのはとても苦手。たとえば事務処理や手続きなどは、気を失いそうになる。

弟たちにいろいろなことを教えてもらったこの四日間。ものすごいケンカもしたけど(笑)。ま、終わりよければすべてよし。

さて、「竹島」の後は、「弘法大師」にお参りに(三~七枚目)。ここも小学生の頃の散歩ゾーン。行ってみれば、庭ですね。はっはっは。小銭を渡し、みんなでお参りをすることに。

「チャリーン!」
お賽銭を勢いよく投げ入れる二人。それを見ていたおじさんが
「あ、あ、それはもっとこうして、そっと滑り入れるんだよ」
と、丁寧に教えてくださる。

思わず冷汗。なにしろ私も、勢いよく投げ入れていたので。できれば外国人グループに入れてほしい。日本文化を再発見中。ってことで。すみません。

展望台から眺める「竹島」。すばらしい~(五枚目)。これぞ蒲郡。
「三河湾からさしてくる~」
って、始まる「蒲郡市民の歌」。みなさん、知っていますか。もちろん私は歌えます(笑)。今急に思ったけど、ジャズバラード風にアレンジしたらどうなるんだろう。ボサノバ風とか。けっこういいかも。

さて、いよいよ最後のランチ。まずは緑茶で乾杯(八枚目)。和風のランチセットにまたまた興奮の二人。
「この店がスペインにあったら、毎日来るのに・・・」
「これだけ食べたら、一人30ユーロはするね」

二人の言葉を全て訳したわけではないので、父にしたら「わけがわからない」ことの連続だったかも。でもきっと、二人の笑顔や口調で「日本を満喫している」ことは、わかってもらえたかなと思う。

ダビーがアイフォーンで、旅行中の動画をうれしそうに父に見せている(十枚目)。言葉は通じなくても、気持ちは通じる。それを実感した「豊橋・西浦・蒲郡一泊二日の旅」だった。

二人を豊橋駅へ送り届ける。なんだか、急に淋しい感じ。
「ちゃんと明日、空港へ行ってよ」
「ももの方こそ。朝早いんだから」

そうなのだ。これは、束の間の別れ。実は私も明日、スペイン帰国が待っている。まず、名古屋空港から九時半発の成田行きに乗る。そこでハビ吉と合流して、スペイン行の飛行機に一緒に搭乗。という予定。ちなみにダビーは友人を訪ねるため数日まだ日本に残る予定。

二人を見送った後、父と私は豊橋の家へ。これからスペイン帰国の荷作りが待っている。なんだかあわただしいが、父の笑顔をお土産にすることができて、私の心ははずんでいた。
(明日に続く)

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