25年ぶりのテニス

九月が新学期であるスペイン。日本の四月に当たるので
「ありとあらゆる教室がスタートする」
あわただしい時期でもある。

出だしが肝心。この時期に申し込み
「グループ(名簿)の中に入れてもらう」
ということが大切。教室によっては「登録費」や「公共費(施設使用代)」なども払う。

この六月に「油絵教室」を終了したので、今回は「カーボンペンシル&パステル」か「テニス」をしたい。と思っていた。まずは受付に。とりあえず、テニスはお試しでやってみて、だめなら却下。ということになった。ちゃんと、試験もあるんですよ(笑)。

確かに昔、テニスはしていたが、なにしろ25年ぶり。四分の一世紀。日本で会社員をしていた頃なので、はるか遠く。いったいラケットにボールは当たるのか。いや、それ以前に果たして、体がついていくのであろうか。

「よ、よ、よろしくお願いします」
「はい。まずは軽くチェックしますね。それから試験ってことで」
「あの、ラケット持ってきたんですけど、25年前ので・・・」

それは、日本から持ってきたプリンスのラケットであった。もちろんそれ以来、ガットは張り替えていない。だいたいラケットケースだって、25年以上前のダンロップ。グリップのバンドなどすり切れて、クッションも何も。

「とりあえず、今日は試験だからこれでいきましょう。慣れてるラケットが一番だし」
慣れてる。って、もうラケットの感覚も忘れてる。っていうのに。

「じゃ、まず右のストロークから。その後、バック。それからボレー、スマッシュ。といきますね」
「・・・・・・・・」

意味は、わかる。が、実際に体が動くのかどうか、というのは別問題だ。しかし、もう後戻りはできない。こうしてコーチと二人、コートに立っているのだから。

それに今回入れてもらえなければ、次回のコース開始時期まで待たねばならない。
「コートに立つのは、25年ぶりなんです」
なんて、うじうじ言っている場合ではないではないか。なんとしても試験を突破して、入るしかないのだ。

「じゃ、いきます」
ネットを越えて、コーチのボールが飛んできた。
「うわっ」
その瞬間、ボールに合わせて体がすっと移動した。ボールとの距離を測り、タイミングを合わせて回り込む。気が付いたら、テニスのストロークでボールを打ち返していた。
「信じられない・・・」

体は、おぼえているのだった。脳みそはだめでも。
「いいですね。じゃ、続けていきます」
コーチの「球出し」が始まった。カートに山のように積まれたボールが次々と、休みなく打ちこまれる。

体育系の私は、こうした「特訓的シチュエーション」に置かれると、怪しく燃えてくるのであるが、心と体は別なのだった。
「スピード上げていきます」

球出しで、コートの端に大きく振られる。それはいい。問題はその後すぐ
「打ち返してセンターまで戻らなくてはならない」
ところ。10球、20球はいい。が、50球くらいになると、ささっとは戻れないんですよ。えらくて。打ち返した後、一瞬動きが止まる。

足腰はまだついていける。が、問題は心臓。えらくてどうにも息が上がってしまう。
「休憩、お願いします」
「あともうちょっと、がんばるよ!」
どうやら、球出しはカートのボールすべてを使い切ったところで、終了。となるらしい。最後はまったく走れず。よろよろとセンターへ。

「はーい。お疲れさん。休憩がてら球拾いしましょう」
そう。体育系世界では「休憩」といっても「座って木陰で水を飲む」などという優雅なシチュエーションではなく、炎天下で全身から汗を吹き出しながら
「球拾いが休憩」
なのである。ああぁ、懐かしい。ちょっとうれしかったりする。

「じゃ、これから試験、始めますね」
「お願いいたします」
これが不思議なのだが、ボレーもスマッシュも、ちゃんとラケットにボールが当たるのである。足元がもつれると、コーチが元気づけてくれる。
「いい感じで打ててる。フォームもインパクトもいいよ」

さて、試験の結果は。
「直すところはいくつかあるけど、しっかり基礎をやってたのがわかる。合格だよ。来週から始まるコースだけど大丈夫かな」
「よろしお願いしますっ」

感激。疲れも忘れて、しばしコートに立ちつくす。まだ入れてもらえた、ってだけだけど。練習はこれからだけど。
「なによりタイミング、リズムがいいね!」
「リズム・・・」

それから、自己紹介となった。こんな滝のように汗を流しながら会話をするなんて、コートだからあり得ること。日常生活にはないよなぁ(笑)。

「ピアニスト!そりゃ、リズム感がいいはずだ。ピアノが弾けるなら、テニスもうまいはずだよ」
「だったら、コーチも。テニスがこんなにできるんだから、ピアノも上手に弾けそうですね」
「えっ・・・・」

帰り道。カフェテリアに寄って、オレンジジュースとサンドイッチ。木陰に座ってひと休み。なのだが、40分近く拭いても拭いても、汗が止まらないのであった。文字通り、滝のよう。太ももから汗が吹き出し座っていられない、なんて何年ぶりだろう。

さすがに、そのまま自転車に乗って帰ることができず、水を飲みながらビーチの木陰でひっくり返る。そういえば学生の頃、いつもこうして「部活」の後に、水を飲んで休んでいたなぁ。

いつもジャージ姿で、男の子のようだったあの頃。に、戻りつつある今日この頃。コートでバテないためにも、今日から筋トレを始めよう。

Facebook にシェア
[`google_buzz` not found]

「25年ぶりのテニス」への2件のフィードバック

  1. momoさん体育会系だったんですね、そんな感じがしてましたけど。
    自転車に乗るのと同じで、テニスも体が覚えていたんですね。

    私は文系でして、スポーツなんて全然。
    46歳くらい?の時に初めてテニスを始め3~4年やってました。
    今(還暦)は歩くのにも気を付けないとすっころびそうでどえらい劣化です。
    セビジャーナスはなんとか、でもスポーツはもう出来る気がしません。

    続けていれば心肺機能も上がりますよ、きっと。
    リズムがいいのピアノをやってるから、って分かる気がします。
    他言語の習得も耳がいいの絶対関係あると思います。

    あ、ウェリントンで”汗をかく”ということはありません。
    汗腺退化したかも・・

  2. 足はつらなかったものの、翌日はすごい筋肉痛で
    ロボットみたいに動いてました(汗)。
    このままではテニスのレッスンについていけないと思い
    これまでの「ウォーキング」改め「ランニング」を開始。
    ところが、ものすごい肉体の劣化で走れない(愕然)。
    心から驚き、心を入れ替え、今日ラン二ング二日目です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です