昨日の続き。大阪は心斎橋のホテルでひと休みした後は、気分も新たに「道頓堀」に向かって歩き出す。陽も落ちて、だんだんいい感じに。
今回の旅行では、レストランはすべて行き当たりばったり。予約なしで入ることに決めていたので
「お腹がすいている時に、近くにある店を探そう」
ということで、意見が一致。
で、まずは「お寿司屋」さんへ。七時前でほぼ満席。
「満席!スペインじゃ、まだレストランも開いてないっていうのに」
驚く二人を引き連れ、奥の座敷へ。
「いらっしゃいませ~!」
勢いのいい声をかけられ、気分も盛り上がる。
「日本人はシャイだと聞いていたけど」
それとこれとは、別だ。仕事中なんだから。
「ももー、助けて。足が・・・」
せっかくお座敷に上げてもらったのに二人とも
「正座ができない」
ことに、後から気づく。そうだった。べラも正座ができずいつも決まって
「イスか掘りごたつ」
だった。
ベラのためなら必死で別のお店を探しに回るところだが、弟二人なので
「足を伸ばせば?」
で、終わり(笑)。背中ももたれられるんだし(写真一枚目)。
まずは、お寿司とビールで乾杯。まずは私が適当にみつくろって注文(二枚目)。これをぺろりとたいらげ
「今度は僕たちが注文する!」
と言い放つので、メニューを一つ一つ訳す。値段を確認することは怠らず(笑)迷いながらも、タコやらエビやらを注文。
小腹がふくれたところで、道頓堀へ。うわーネオンだ、さすが大阪(四、五枚目)。ものすごい人、人、人。店、店、店。それでも、彼らの関心を引いたのはお店よりも料理よりも
「そこに行列になっている人々」
なのだった。
「いったい何のために、あんなに行列をしているのか」
「そりゃ、お店に入るためでしょ」
「だから、何を食べるために、どうしてそこまでするのか、ということを彼らに聞いてほしい!」
「はぁあっ?」
なぜ、私が街灯インタビューをしなければならないのか。しぶしぶ行列があるたびに、聞いて回るのだが、もちろんみなさんの回答は
「ラーメンを食べるため。おいしいから」
「タコ焼きを食べるため。安いから」
という、予想通りのもの。
「信じられないよ・・・」
私だって、食べるための行列は絶対にしないけど、ま、観光客でそれが楽しく、時間があるのならいいんじゃないの。
結局、二時間ほど道頓堀界隈をぶらつき、本日二軒目の「お好み焼き屋」さんへ。せっかくなので焼きうどんも注文(六~八枚目)。
「おぉお、テーブルの中に、鉄板が埋め込まれている!」
感動するポイントがちがうな(笑)。私の方は一年ぶりのお好み焼きに、すっかり心奪われてるのに。
「これは?」
「かつおぶしと、紅ショウガ。好きなように乗せていいんだよ」
「おぉお~」
好きなだけ。と聞くと、急に目が輝くのである。
スペインにはこういう
「テーブルに置かれているご自由に!セット」
は、塩と油。と決まっている。
それが「食材」なので、とても珍しいのだ。
「おおー、これはおいしい!」
紅ショウガが、二人は大いに気に入ったようす。
「だからって、そんなに食べるか?」
お好み焼きや焼うどんの上に、かける。のでなく、完全に一皿を紅ショウガでいっぱいにして、食しているのだ。
「言ってみれば、これは日本のピクルスだよね」
「えー、そぉお?」
私の生返事に、納得しない表情で
「僕はピクルスだと思って食べてるけど。ちがうの?」
「うーん。日本人は、ピクルスと同じ感覚では食べてないと思うよ」
「絶対、ピクルスだって!」
「うーん、じゃ、そうなのかも・・・」
「なんで意見を変えるんだ。さっきは違うって言った」
「だって、日本の文化や感覚を少し忘れてきちゃってるから。日本人が紅ショウガをどう思ってるか、なんて知らないよ」
備え付けの紅ショウガを、半分以上も食べる客は、そういないであろう。もちろんそれは、私の胸の内にそっとしまっておくことにして。更けていく、大阪の夜。
翌日は、大阪を出て、一路奈良へ向かって出発。近鉄奈良線に乗る前に、再び道頓堀を通りがかるが、昨夜の賑わいがうそのように、ひっそりとしている(写真九、十枚目)。夜と昼と。まるでちがう顔を見せる道頓堀。
そんな折、ニュースではくり返し
「今日明日、日本で最高気温を記録するのは奈良と京都です。お出かけのみなさん、熱中症にお気をつけください!」
と、呼びかけが続く。
まさか。その熱中症に自分がなってしまうとは。もちろんその時、知る由もなかった。
(明日に続く)
紅生姜は、他のご飯のおともの漬物とはちょっと違いますよね、でも私も説明できません(笑)・・あ、薬味的な?スペインに薬味ってあったっけ?
薬味。かぁ。すっかり忘れていた概念でした。
ないですよね?
スペインの場合、もうスパイス、香辛料になっちゃうはず。
不思議な紅ショウガのポジション・・・