先日、ドイツにお住まいの映子さんが、マラガまでわざわざピアノレッスンに来てくださいました。
以前、隣町のミハスに住んでいらした映子さん。毎週、判を押したように二年の間、きっちりとレッスンに通ってくださったのです。
映子さんといえば、うちのピアノの教室では最年長の生徒さん。で、とても有名。でも人気の秘密は、別のところにあります。
実は映子さん。ピアノを始められた時、七十歳を過ぎておられ
「鍵盤のどこに、ドがあるかもわからない」
状態だったのです。
それが毎週、練習に練習を重ね、たった二年で
「愛の賛歌」から「エリーゼのために」まで、弾けるようになったのです!
こんなに強い意志を秘めた方は、なかなかいません。恒例の「発表会」では「エリーゼのために」を披露し、会場は拍手喝采に包まれました。
ちびっ子のお母さん方からは
「信じられない」
「なんてすばらしい」
と、感嘆の声がやみませんでした。今でも、映子さんのことを尋ねてくれる方が、たくさんいらっしゃいますよ。
なんだか手紙のようになってしまいましたが、映子さんは私にとっても、忘れられない生徒さんです。
「いくつになっても、やればできる!」
「やる気がすべて」
それを、身を持って教えてくれたのですから。
この日は、久しぶりに映子さんのピアノを聴くことができてうれしかったです。
「シューベルトのセレナーデ」「枯葉」「愛の賛歌」・・・
すてきな演奏ですね(写真一、二枚目)。
集中したその横顔が美しく、写真を撮らせてもらいました。楽譜の手直しや写真を送ることもできるので
「ぜひワッツアップを始めてください」
と、お願いしてしまいました。そうすれば、映子さんと「遠距離レッスン」ができるかも。と思ったから。
最後になりましたが、手作りの「味ごはん」をありがとうございました(三枚目)。玄関を入るなり
「お昼ごはん、まだでしょ。レッスンが続いて食べてる時間、ないわよね。さ、これを食べて。三十分後に来るから」
あの日は、朝の十時からレッスンで、映子さんがみえた二時までノンストップ。ランチ抜きでした。どうして、言わないのにそんなことがわかったんだろう。
あんまりおいしくて、息つく暇もなく全部食べてしまいました(笑)。ごぼうの香りがたまらなかった。聞けば、お酒も入っているとか。おいしいわけだ~(納得)。
映子さんとは、一年に一度しか会えない。それなのに
「私がお腹がすいているんじゃないか」
と、気にしてくださる。
それだけで、ふつふつメラメラと元気が湧いてくる。映子さんのピアノとお弁当で、心もお腹もいっぱい。私、がんばります。
「ドイツにも来てね。待ってるわよ」
私たちは肩をしっかり抱き合って、別れの挨拶をした。
そうだ、そういう可能性だってある。待っているばかりでなく。来年こそは、重い腰をあげてみようか。
「いくつになっても、やればできる!」
「やる気がすべて」
その教えを、行動でお返ししたい。