第63話 お祭り好き、”放題”好き!もうどーにも止まらない♪マラガ人の年末年始

12月に入るや、スペインはカトリックの国らしく一斉に
クリスマスデコレーションに包まれる。マラガも、町の至る所に
ポインセチアの鉢植えやイルミネーションが取り付けられ、
一気にクリスマスムード。人々の顔のてかてかぶりったら、
8月のフェリア(夏祭り)以来の怪しさだ。
とゆーのも、これから1ヶ月に渡って繰り広げられる
フィエスタ(パーティー)が、ハンパじゃない。
まず週末は友人知人、会社の同僚とセントロ(中心街)へ繰り出して大騒ぎ。
平日はクリスマス市(クリスマス用品やプレゼント用の小物、
本などを売る店が100軒くらい並ぶ)をぶらぶら、あるいは
スーパーでクリスマス用のお菓子トゥロンや生ハム、スモークサーモン、
ワイン、カバ(シャンパン)などを山のように買い込む。
24日は家族親類集まっての夕食会。その後、教会へミサへ行き、
若いモンは更に友人たちと繰り出す。
25日は昼も夜もパーティー。人々のウキウキ度は日に日にボルテージアップし、
極めつけの大晦日は、大人も子供も朝までレストランや仮設小屋や
ディスコや誰かの家で歌い飲み踊りながら新年を迎えるのである。
12時の鐘と共に飲み込む12粒のブドウも忘れてはならない。
締めは1月5日の午後にマラガ中心街を完全通行止めにして行われる
“ロス・レジェス・マゴス”のお祝い。ここまで休む間なし、
休んでばかりのマラガ人が唯一、一気にかけぬけるのがこの12月なのだ。

カトリックの国スペインでは、サンタクロースがクリスマスイブの夜に
プレゼントを届けに来るのではなく、3人の王様がラクダに乗って
1月5日の夜に贈り物を届けに来る。それがこの“ロス・レジェス・マゴス”。
子供たちはこの日を、それは首を長くして待っているのだ。

私のピアノ教室の子供たちも、
「レジェス(王様)にもう手紙を書いたよ!」
つまり、両親にほしいものリストを渡したと言って、
それはそれはお利口さんにしているのだ。
ピアノの練習だって毎日ちゃんとやる。何しろ抱えきれないくらいの
プレゼントをもらえるのだ。量もさることながら、
スペインのおもちゃはパッケージも巨大なので、
包装紙で包むと1m角とかはふつうである
(一度ショッピングセンターで2m角くらいのプレゼントを
買った夫婦が、どうにも車に入れることができずケンカになっていたが)。

さて、町を完全通行止めにしてまで行われる
ロス・レジェス・マゴスのお祝いとは、一言で言うと
3人の王様に扮した子供たちのパレードなのだが、すごいのはこの時、
観衆に向かって投げられるキャンディ。その量たるや、
日本人の想像をはるかに超えている。
わずか3時間余りの間に投げられるキャンディの量、
なんとトラック20台分。これが雨あられと天から降ってくるのだ!
子供なら一度は夢にみたシーンではないか、
それを現実にやってしまうのが、さすがO型の多いスペイン人だ。
さらにキャンディの量がずば抜けて多いのが、
ここマラガを含むアンダルシア地方なのである。
とにかくお祭り好きなのだ。どれくらいお祭り野郎かって、
国の定めた祝日以外に、勝手に祝日を作って休みにしてしまう。
振替休日と次の祝日の間の日まで、どーせ間にはさまってるんだからと
休日にするヤツまでいるのだ。オセロじゃないんだから、まったく。

この時期、たいていの店の中央にミニテーブルが置かれ、
2、3本のリキュールのボトルとお菓子、おつまみが山盛りに並ぶ。
八百屋もパン屋もみーんな、お客さんは自由に一杯やってよいのだが、
日本と違うのはそれが“お客様のためのサービス”ではなく、
あくまでお店の人が“一緒にワイワイやるのが好き”なのである。
ホント、マラガ人ってワイワイやるために生きてるんだよなぁ(しみじみ)。
そんなわけで「フェリス・ナビダ!(メリークリスマス)」と叫びながら、
こっちでもあっちでもアニス酒をご馳走になりながら3、4軒買い物をして
帰る頃には、すっかりでき上がってしまう。

先日、セントロへ出かけた時など、広場に仮設テントが設置され、
月曜日とゆーのにすごい人だかり。何かと思えば、市長からのプレゼントで
“飲み放題”が行われているとゆーではないか。それがビールから、
ワイン、シェリー酒、マラガ産極甘口ワインまで何でもあり、
まるで居酒屋だ。ロス・レジェス・マゴスのキャンディといい、
この飲み放題といい、今、気づいたがマラガ人って“放題”が好きなんだな、
したい放題、か。

この時期、音楽屋の私は一年で一番の稼ぎ時なので、毎日休みなく
今日は東、明日は西と演奏に出かける。
ドブレテ(一日に2つ仕事があること)は音楽屋にとって、
ちょっとしたオノール(名誉)なので、たとえ演奏と移動で
体はへとへとでも、心はガナでいっぱい、顔も音色も一段と
てかてかつやつやして、チップだって自然とはね上がる。

とあるレストランから着物で来てほしいとの連絡があった。
一度、浴衣で弾いたことはあるが、着物の帯なんて結んだことがない。
着付けを手伝ってくれる家族やとくばあちゃんもいないので、
自分で解決するしかない。
さっそくベラに手伝ってくれるようお願いし、
鏡の前に着付けに必要な準備すべてを並べてみるが、すごい量だ。
普段着るのは袖なしドレスなので、ストンと体を通せばそれで終わり。
着物の帯も見たことない彼など、

「この布やひも、全部体に巻きつけるの!?」

と真顔で聞いてくる。
折って巻いてしばって折り曲げて押さえて回して、
ひぇーっ!帯に気を取られてる間に着物がくずれてきた。
「ダメダメ、そっちを上げて、もう一枚重ねて回すの!
ちがうちがう、あーっ」
私の背中で必死に格闘しているベラ、ごめんね。
「こりゃ、馬に鞍つけるより大変だな」

「成せばなる、成さねばならぬ何事も」

そう、成せばなるのだ。情熱とインスピレーションに従って今年もいくぞ!

フェリス・アニョ・ヌエボ!(明けましておめでとう)
ケ・テンガ・ムーチャ・フェリシダー!(いいことがたくさんありますように!)

 Feliz año nuevo, que tenga mucha felicidad!

(第64話につづく)

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