13・マラガで待っていたものは

昨日の続き。名古屋空港では「カレーうどん・ほろ酔いセット」でしめ。翌日はホテルの朝食バイキングをしっかり食べ、いざスペインに向けて出発。フィンエアーで日本からヘルシンキ、そしてマラガ空港へ。のべ18時間の長旅。

いつも機内ではひたすら
「映画を見る」
ことにしている。もちろん「時間つぶし」ではない。

マラガの自宅(アトリエ)にはテレビがないので
「イスに座って画面を眺める」
ことが、そもそもめったいないシチュエーション。これだけで、すでに歓喜。非日常。超贅沢。

いつも立って行動しているので(一日の大半)こんなのんびりワイン片手に画面を眺めてくつろぐなんて、飛行機の中くらいのものなのだ。

というわけで、食事タイム以外はずっと映画。だいたい四本は見る。行きのスペイン~名古屋間で四本。帰りの日本~スペイン間で四本。計八本。集中鑑賞。

個人的には「映画祭」的位置づけ。機内タイムというのは。

さて、マラガ空港に無事到着。これからスーツケースを受け取り
「自宅までタクシーで帰り、シャワーを浴びてふかふかのベッドに寝転がる」
ことを想像している、その時だった。

「ピン、ピン、ピン、ピン!」
とものすごい勢いで、アイフォーンがメッセージの着信を告げる。見れば、ハビ吉。な、な、なんなんだ。

「今、空港に着いたよ!迎えに来た。どこにいるの?」
「うそ・・・」

確かに今夜、マラガに着くことは伝えてあった。でも、ふつう前もって言わないか?日本を出発する前とかに。マラガ空港に迎えに行くから、とか。

この「心の準備ができていない」状態に、一発かますのがハビ吉なのだ。これでよく私たちは大げんかになるのだが
「サプライズだって」
と、本人は悪気がないどことろか、むしろ大満足。

「ちょっと。前もって言ってよ」
「なんで?」
「もしかして、秘密の恋人とか迎えに来てたらどうするのよ」
「いないじゃん」
「・・・・」

アイフォーン片手に現れたハビ吉の顔を見ると、なんだか急にマラガに帰って来た気がした。
「ありがとう」
「秘密の恋人は追い返した?」
「はっはっは」

私たちはしっかりと抱き合って挨拶をした。大切な友達の体温をいつも感じていられるスペインの暮らし。私が今日までどんな時もがんばって来られたのは、友達の温かい腕があったから。

「さ、これから家に帰って夕食だ」
「えっ、でもうちには何も食べるものないよ。冷蔵庫からっぽににしきたから」
「行くのは僕のマンションだよ」
「はっ?」

車に乗り込むと、そこにはダビーとアウローラが待っていた。
「うわー、二人ともありがとう」
「マラガへようこそ」
「あけましておめでとう」

ハビ吉のマンションへ到着。この時点ですでに名古屋のホテルを出てから一日以上が経過。そう
「一睡もせず徹夜明け状態」

披露はマックスに達している。が、この弟たちはそう簡単に「寝かせてはくれない」のである。

姉はもうへとへとなのだ。ということをどうしたら理解してもらえるのか。

「マラガの自宅でゆったりと荷をとく」
はずが、なぜかハビ吉のマンションで夕食。まずはワインで乾杯。おいしい料理に一瞬、目が覚める。

「おかえり~」
「日本はどうだった?」
「お父さんは元気?」
「展示会はどうだった?」
「もうお金持ちになった?」

質問の嵐。であるが、ほとんど耳に入っていない。ワインを飲んでいるうちに、とんでもなく気持ちよくなってきた。

「あぁーだめだ、このまま寝てしまいそう」
「うちに泊まって行けばいいよ」
「・・・・・」

こうして、何度ハビ吉のマンションに泊めてもらったことか。
「だったら、シャワー浴びていい?」
「パジャマ貸して」
言いたい放題である。

あまりによく泊まるので、洗面所には私の「歯ブラシ」まで置いてある。もちろんハビ吉が購入。

翌朝は「ロスコン」というロス・レジェスに食べるケーキ(5,6枚目)で朝食。さすがにお昼近くになると、そろそろ家に帰りたくなってきた。

なにしろ、名古屋のホテルを出てから丸二日。なんて遠いんだ、我が家は。

「そろそろ家に帰らないと。オウムも待ってるし」
そう私が言いかけたとたん、ダビーがぼそりと言った。
「ハビー、聞いたか?オウムの方が僕たちより大切なんだって」
「・・・・・・」

いつもながら「どうしてそうなるかな」という論法で、私を唖然とさせる。でも同時に
「マラガに帰って来たんだな」
と思う瞬間。

私のよく知る空気、リズム、ユーモア。友情に乾杯!あなたたちにキスを。
Javi, David, Aurora, Gracias por vuestra amistad. besos

(「ニッポンわくわく記」完)

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