マラガの街を歩いていたら、若い男の子に名前を呼ばれた。青年はバイクから降りてヘルメットをはずす。
「もも!」
なんと。ビクトル君。中学・高校とピアノレッスンに通っていたあの少年。が、大学生になり、めちゃくちゃカッコよくなって目の前に立っていた。
「ビクトル〜!」「今でも時々、ピアノを弾くよ」
優しい眼差しは、変わらない。私たちは力いっぱいハグをした。両親にも学校の先生にも言わない秘密(笑)を、よく聞かせてくれたっけ。
「ピアノを弾くと、あなたを思い出すよ」
おお〜。そんなこと言ってもらえるのも、ピアノの先生だったからこそ。レッスンがなくなった今でも、私たちには「分かち合った時間」が残る。互いの心の中に。
ビクトルのお母さんとは友人なので、さっそくこの写真を送ってあげた。ら、すぐに電話がかかってきた(笑)
「ももー、うちにご飯食べに来て〜!おしゃべりしよ」
20年以上前。マラガに渡った時、私の名前を知る人は一人もいなかった。たった一人、単身でスペインへ渡ったから。
なのに。今は通りを歩いていると、いろいろな人に呼び止められる。マラガが「私の町」になった。と、思うのはそんな時。
私のマラガ生活は「人との出会い」でできている。そして「一緒に重ねた時間や思い」こそが、何よりの宝ものになっている。