早朝から「書籍と書類の大処分」に突入。紙地獄の中、オウムのオタケビでランチタイムであることを知る。が、冷蔵庫を開け
「何もない」
ことを思い出す。日本ならコンビニという手がある。が、マラガでは、お店は2時から5時まで閉まってしまう。
時計を見ると2時半。この時間で開いているのはチェーン店のスーパーのみ。とても買いに行っている暇はない。今もう、作らねばならないのだ。
「ごめんね、こんなママで」
オウムは食事用の自分のイスにとまり、お利口さんに待っている。床に広がる紙を踏んづけながら再び台所に戻り、何か食料はないかと棚を見回す。
冷蔵庫には何もない。が、棚には食べられるものが何かあるはず。うーむ。とりあえず、ランチメニューが決まった。
「ひよこ豆とニンニク、スパイスで作るフムス(モロッコ料理)」
「ツナと海苔のスパゲティ」
「玉ねぎのサラダ」
なにしろ野菜が、玉ねぎとにんにくしかない。ところまでたどり着いた。恐ろしいほど彩りがない。3品全てクリーム色。これで食欲が湧くはずもない。
「あぁ、せめてネギでもあれば」
緑がちょこっと乗るだけで、世界は一変するのに。オウムは自分が食べられるものがなく、テーブルと私の顔を交互に見つめている。
「夕食はちゃんとするから。ねっ」
悲しげにイスにとまっている姿を見ると、不憫になってくる。オウム用のえさ(ミックスナッツ類)で我慢して〜。大好きなシーツ遊び(くるんで、そこから出てくる)でご機嫌とり。
「夜は大好物の卵焼きにするからね!」
瞳がキラリ、と輝く。食べ物の名前だけはちゃんとわかるのだ。食後は再び紙地獄へ。そしてまた、オウムのオタケビで夕食の時間を知る。
「うわーっ、まずい。もう8時じゃん」
あわてて八百屋へ走る。が、無情にも一番近くの店は「臨時休業」。そこで私は選択に迫られた。
「1・少し遠いチェーン店スーパーへ行く」
「2・このまま帰る」
30秒ほど考え、後者を選んだ。なぜなら、私には「必殺技」がある。どうしても困った時は最終手段だ!ふらふらとマンションへ戻ると、お隣さんのドアをノックした。
「すみません、卵をゆずってください」
オウムのために、どうしても卵を手に入れなければ!その一念で、ドアをも叩く。
「あら、いいわよ。料理を始めた後で、卵がないって気づくんだよねぇ」
まったくそうではなかったが、両手でありがたく卵を2つ頂戴した。なんだか高級品。これが今夜のうちのメインディッシュなのだ。そっと大切に持ち帰る。
「オムレツだよ〜!」
オウムが一目散に飛んでくる。熱々をハフハフ言いながら食べている姿を見ていると、涙が出そうになる。明日はちゃんと食料品の買い出しに行くから。ごめんね。
そして夜の9時半。イワシとビールをやりに、うちの前のチリンギート(魚介類レストラン)へ。あぁ、終わりよければ、全てよし。