ずーっと考えている事がある。正確に言うと「答え」は出ていたのだが、さすがに即行動には移せず、これまで何十回と自答しながら消化していた。
「ピアノ教室を続けるかどうか」
春に、それは私の中ではっきりと形を持ち始めた。20年以上、続けてきたピアノレッスン。生徒さん方とも、すばらしいおつきあいをさせて頂いている。
何より、私の今の生活を経済的に支えているのはピアノレッスンなのだ。だから、こうして絵も描いていられる。が、問題は
「私の心が、もうピアノレッスンにないこと」
なのだった。このまま気づかぬふりをして、やっていく事はできる。あと数ヶ月か数年か。仕事だと割り切って。
ピアニストをやめる時の方が簡単だった。私一人のことだから。でも、ピアノ教室には生徒さん達がいる。それも、みんなやる気いっぱいで、新しい曲を弾くのを楽しみにしている。
「もうレッスンできないと、みんなに伝えることができるのか?」
それを想像するだけで、胸が押しつぶされる。しかし。決めなくてはならない。イエスかノーか。こういう時、私は誰にも相談しない。答えはいつも自分の中にあるから。
ここ1週間。今期の制作準備のため、毎日12 時間ぶっ続けで動き回っていた。家具を捨て棚を取り外し、テーマやスタイルを決め、素材や画材を準備して。
へとへとになって、ベッドにくずれるように倒れこむ。爆睡。毎日がその連続。そして。翌朝7時には、自然に目が覚める。早く続きを始めたくて。
そして今日、私の心と体は、ついに叫び声を上げた。
「創ることに命の全て注ぎたい!」
もう、ごまかすことはできなかった。それは51歳である私の、命の、魂の叫びだった。だったら、やってみよう!はるか20数年前
「ピアニストになりたい!音楽に命を注ぎたい」
と、命の声に従ってスペインへ渡った、あの時のように。はたして生活できるのか、何も考えず夢中で飛び込んだ。そして。毎日めくるめくように音楽に生きた。
「何事にも、卒業がある」
私はピアノレッスンを、卒業する。やめるのでは、失うのではなく。次の世界に飛び込むために。
そして。生徒さん達も、うちのピアノ教室から卒業する。新しい先生、世界へ羽ばたくために。今週末に、みなさんに連絡しよう。
「命の使い方を、自分の明確な意志で決める」
いつも自分に忠実に。これまでも、これからも。でこぼこドタバタ進んで行こう。