33.ハーメルンの笛吹き男の決心

金山の「音プラコンサート」も無事、終わり
いよいよお楽しみの「食事会」である。
メンバーは、後藤KK、大野さん、須田さん、賢田さん、
そして仕事を終えてかけつけてくださったクロさん、べラとわたしの7名。

スペイン風を打ち出している店らしく、メニューに「パエリア」などがある。
「よし、頼んで、べラに感想を聞こう!」
ということになったが、出てきてびっくり。
スペインは大鍋で出てくるが、こちらは手のひらサイズ。
「どう?」
と、スプーンで一口、試食したべラに聞いてみるが、不思議そうな顔をして黙っている。
「正直に言っていいんだよ」
と、うながすと一言ぽつり。
「うーん、量が少なすぎて、わからなかった」

あわてて、ピザや揚げ物などを追加注文。ビールもおかわり~!
勢いがよくなるにつれ、互いの「とんでも話」「なんだそれ話」に花が咲く。
わたしたちはそれでいいが、初対面の賢田さんには退屈では、と思っていたら
ビールを手に、心から大笑していらっしゃるではないか。
わたしは、ほっと胸をなでおろし
ブログの路線がこのままでいいことを、はっきりと確認した。

おなかもいっぱいになってくると
べラが突然、バイオリンを弾き出した。
座っているレストランの席で、である。
「他のお客様の迷惑になりますから、って言われるかも」
と、いちおうべラに伝えておく。
が、音量がさほど大きくなかったこともあってか、止められることはなかった。

勢いにのったべラは立ち上がると、今度はお店の外に出て弾く、と言う。
「ええ~っ」
「外で弾くの?」
「ビデオ撮るよ!」
と、みんなこぞって、べラのあとをついて行く。
まるで、ハーメルンの笛吹きのような光景。
みんなを連れ去られ、急にさびしくなってしまったテーブルで
後藤KKとわたしは、ちびちびとビールを飲んでいた。
「食べ逃げ」ではない「証拠」になっていたのである。

べラにとって「通りで弾く」ことは、大切なライフワークのひとつ。
弾きたいときに、自由に弾く。そのときの気分で。
それはホテルやレストラン、ライブハウスで弾いているときとは
まったくちがうものらしい。去年、ウルグアイに行ったときも
「毎週日曜日、通りで弾いてたよ。楽しかったなぁ!」

ブラジルでは、飛行機の乗り継ぎが2時間遅れになり
それでは、と待合所でバイオリンを弾き出したらしい。
「弾いていたらね、いろんな人が聴きにきて♪ 楽しかったなぁ」
堅苦しいコンサートは、実はちょっと苦手なべラ。
ライブハウス、レストラン、ホテルなど、みんなとコンタクトできる場所が好き。
そういう場所で、演奏したい。
オーケストラの仕事も、だから合わなかった、と言う。

そしてこの日、ホテルに帰るとべラは、きっぱりと言い切った。
「次回、日本に来るときまでに、日本語を練習します!」
「そうなの?」
「今日。みんなでとっても楽しそうだった・・・僕、何にもわからなかった」
急にさみしそうに、背中を丸める。
「そうだよねぇ・・・しゃべるの早かったし」
「僕、練習します!」

そのときは、半分も信じていなかったが
べラの中では静かに、しかし確実に
「日本語をしゃべりたい芽」は育っていたのであった。

マラガに戻って、自ら「日本語レッスン」を始めたべラであったが
両親への国際電話で、とんでもない言い回しをしたら
「まぁ、吉本興業に入れてもらえるといいねぇ~♪」
と母に、今後の進路をさし示されていた。

真剣だから、笑える。というのは、ある。
先日も食卓で、「おかわりっ!」と言うところ
「おわかりっ!」
と、言われたときは大笑いしてしまった。ごめんね、べラ。

(「ニッポン驚嘆記・34」につづく)
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「33.ハーメルンの笛吹き男の決心」への1件のフィードバック

  1. 写真、入れました!
    遅くなってすみません。
    入力しきれない写真は「ニッポン驚嘆記・総集編」で
    一気に紹介します。お許しを~!

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