パラドールの朝食は、とにかく優雅なのだった。16世紀の修道院。当時の僧侶たちの食堂がレストラン。天井の木細工やシャンデリアを見上げていると
「シャンパンで乾杯しよう!」
ハビ吉の手には、なんとシャンパンのボトルが。冷えたシャンパンを朝からサーブしてもらえるなんて。なんという贅沢。
「11時まで食べてていいんだよ」
ハビ吉の食欲はすごい。私の4倍くらい。トルティージャ(スペインオムレツ)を始め、ピスト(トマトやピーマンの煮込み)、モルシージャ(血のソーセージ)、ミガス、生ハム、チーズ・・・
2人で何度もおかわりするので、空き皿が「回転寿司」の要領で目の前に積み上げられていく。
「もものお父さんと行った回転寿司。あの時はこれくらいあった!」
ハビ吉の手は、テーブルから30センチくらいを示していた。「人生であれだけ沢山の寿司と刺身を食べた1週間はない」と、満足げに語る。
その間も、クエンカ名物の「鹿や猪のチョリソー、チーズ四種、メンブリージョ」などが、次々と胃袋に吸い込まれていく。恐るべし。
その横で私はすでにデザート。クエンカ名物のアーモンドのお菓子や地元の蜂蜜などを、シャンパンでいただく。
周りを見回したが、朝からシャンパンを飲んでいるのは私たちだけだった。この朝食バイキング、実は25ユーロ。それがなんと。特割プロモーションで7ユーロに!ハビ吉、ありがとう。
たらふく食べて11時に退場。これはもう完全にブランチ。お腹をさすりながら、よろよろと車に乗り込む。
「アルバラシン村に向かって出発!」
約3時間の道のり。距離的には近いのだが、山間のルートなのでスピードが出せない。地図を見ても、ひたすら山道でやや心配。はたして数年来の夢である
「この世から忘れられたような陸の孤島」
へ、無事たどり着くことができるのか。
「グーグルマップがあるから大丈夫だよ」
アイフォーン片手に、鼻歌まじりでクエンカの町を出発。その時、私たちはまだ知らなかったのだ。
「全く電波がなく、ラジオはもちろん、スマホも使えないデッドゾーン」
が、その先に広がっていることを。
(明日に続く)