ついに来た!陸の孤島アルバラシン。超マイナー・無人地帯のテルエル県。スペインにこんな大地があったのか。岩山の上にそびえ立つレンガ色の村が、一瞬で私の心を奪う。
「あの階段を登って行くんだよ」
そう、ここからはすべて歩き。まず村に入るのに、ものすごい急な階段を登って行かねばならない(写真2枚目)。
五分で息が上がる。心臓もバクバク。でも、それを上回る興奮と歓喜に貫かれているので、足取りは軽い。
「アルバラシン〜、アルアルバラシーン」
鼻歌まじりで、迷路のような通りに吸い込まれていく。どこを見ても、絵になる。目から飛び込んでくる刺激とインスピレーションでふらふら。
「ケ・ボニート!(なんて美しい)」
まさにバラ色(レンガ色)の迷路。まるで映画や小説の舞台のよう。この村を舞台に、強烈に物語を作りたくなってきた。
石畳、バルコニー、街灯、オレンジの瓦屋根・・・この村に1週間くらい住めないものかしら。
観光客のいない、しーんと静まり返った通りをひたすら進む。めざすは展望スポット。なので、できるだけ坂道を上へ上へ。
「誰もいないね」
観光客はどこに?住んでいる村人たちは?すでに廃墟化した建物も多い。「スペインの美しい村ベスト10」に必ずランクインされる有名な村なのに。
先週は、もう雪が降ったらしい。11月中旬で。雪景色はまた美しいと思うが、電波なしのデッドゾーンに雪では、なかなかここまで来られない。
「小さい時に、両親と来たことがあるよ」
ハビ吉がぽつりと呟く。子供だったので村の記憶はあまりないが
「妹が迷子になり、両親が半狂乱になった」
のらしい。そうでしょうとも。私たちでさえ、途中何度か方向がわからなくなった。なにしろ道を聞こうにも
「誰もいない」
ので、尋ねようがない。いるのは、猫だけ。その時だった。いきなり視界が開け、アルバラシン村が一望できる場所に!(写真6、7枚目)。
「すごーーーーーい!」
感激で飛び上がってしまった。これを見るために、これに出会うために、ここまで来た!激流のような感激に貫かれ、ただただ眺めていた。
「私にとって、必要なピース」
そんな気がした。これからの私の人生に、必要な体験。強烈な感動。インスピレーション。
「ももが、山ヤギのように頭がおかしくなって、写真を撮りながら走り回っているよ」
ハビ吉が、叔父さんと電話を再開。さすがにこの村には電波はあるのだ。そして。帰り道を探して、坂道を下り始めたその時。
「あの、英語は話せますか?」
いきなり6人もの外国人グループに取り囲まれた。「さては迷子に」と思ったら、なんと。
「テレビの撮影をしてるんですけど・・・」
陸の孤島アルバラシン。猫の次に会ったのは撮影隊。それも外国の。ハビ吉が英語を話せるとわかると、思わぬ展開になっていくのだった。
(明日に続く)