アルバラシンからクエンカへ。帰りは県道の多い南ルートで。行きの北ルートの方が景観は断然いい。タホ川の水源地や湖、残雪もあり。ただ危険度もアップ。
「もう10時過ぎだけど大丈夫だよね?」
お腹ぺこぺこでパラドール内のレストランへ滑り込む。さすがスペイン。11:30まで営業(笑)余裕でディナースタート。まずは地元の赤ワインで乾杯。
「クエンカの名物料理がいいね」「温かいものが食べたい」
さっきまであくびの連続だったのに、メニューを見ると急に元気が出てくる。お客さんは四テーブルほど。静かで落ち着いた大人の雰囲気。
「豆と野菜&猪肉の煮込みスープ」「鹿肉の栗ソースがけ&りんごのタルト」
が運ばれてくる。なんという贅沢。いつもの自炊粗食メニューとは天地の差。それもすばらしいアテンドで。オウムと取り合いしながら、必死でゆで卵を食べるのとはわけが違う。
「夕食後、バルで一杯飲んで行こうか」
なんと、ハビ吉はしっかりと「ワンドリンクサービス券」を入手していた。地元の赤ワインをゆったり楽しみながら天井を見上げると
「聖人じゃん・・・」
バルとはいえ、敬虔な場所なのだ。ぐだぐだと酔っぱらっている場合ではない。そういえば、写真コーナーも「僧侶バージョン」だった。
このパラドール。周りには何もなく、V字の深い渓谷によって市街と完全に隔てられている。夜は静寂に包まれ、世間から隔離された修道院ムードいっぱい。
「静かなクエンカの夜を、僕は読書や瞑想で過ごすんだ」
と出発前、鼻息を荒くしていたハビ吉は、ベッドに転がるや5分で寝ていた。私はしばらくこの厳しい大地の
「陸の孤島感」
を、全身で味わっていた。柔らかな太陽の光と地中海に抱かれたマラガとは、まるで正反対の何か。その正体を見極めたくて、心がざわざわと騒ぐ。
「閉ざされている」「隔離されている」
からこそ、掻き立てられるインスピレーション。いつかここを舞台に、物語を書いてみたい。
(明日に続く)