36.豊橋市民病院コンサート

今日は岐阜駅から名鉄に乗り、豊橋まで飛んでいかねばならない。
母がお世話になっている豊橋市民病院で
「病院コンサート」が待っているのである。

名鉄の中で、べラが朝食のパンをもぐもぐしているあいだ
わたしは昨夜の大野さんとの会話を思い出していた。
ホテルまで送ってくださるという大野さんがハンドルを握りながら
「泊まるホテルは、岐阜駅前なんだよね、住所は?」
「ええっと・・・かみだまち、です」
「そんな町あったかなぁ」

「どんな字?」
「神さまの神に、田んぼの田です」
「そりゃあ、かんだちょうだろう!」
「ああ~、そうかぁ」
「そ、それも、読めなくなっちゃったのぉ!」

たぶん、大野さんの優秀な頭脳では、起こるはずもないことが
わたしといることで「立て続け」に起こるのであろう。
いや、わたしだけでなく、べラの面倒も見ているので、ずっしり二人分。

昨夜のライブ会場でも、舞台上で椅子を壊し
ゆっくりと倒れていくべラに向かって全速力で走り寄り
100キロの巨体を支えてくださったのだから
これはもうマネージャーではなく、「人命救助」である。

今日からは、大野さんはお休み。
その分、自分たちで何でもしなくてはならない、と気を引き締める。
駅で両親と合流して、いざ豊橋市民病院へ。

今日のコンサートは2部構成。
まず第1部はハーモニカの四重奏。「ガイタ・クアトロ」さんの演奏が楽しめる。
数年前からおつきあいいただいているメンバーのみなさんは
今日のために仕事を抜け出して、かっこいい衣装に着がえ
病院に駆けつけてくださった。
美しい日本の名曲に、患者さんたちも聴き入っている。

第2部はわたしたち。バイオリン&ピアノ。
なんと!豊橋市民病院のロビーには、グランドピアノが置かれているのだ。
すごい。これは、自慢していいですね。
スペインでもこんな病院、なかなかありませんよ。

世界の名曲をテーマに、いろいろなジャンルの曲を30分ほど演奏。
さらに、音楽に合わせて手拍子♪
最後はみんなで、日本の唱歌を歌って♪ 免疫力をアップ!

患者さんのみなさんが、どうか一日も早くよくなりますように、と祈る。
体調の悪いのを押して今日、聴きにきてくださった人もいるだろう。
これからどうしたらいいのか、途方にくれている人もいるかもしれない。
母の入院中、涙を抑えて何度も、このロビーを通ったことを思い出す。

病院のスタッフのみなさん、先生、看護婦さんにも、お礼を言いたい。
命と向き合う仕事は、わたしたちの想像もできない苦労がきっとあるにちがいない。
母が本当に、何度もお世話になり、ありがとうございました。
そんな言葉にならない思いを、ピアノに込めたつもりだった。

この日、病院には、わたしの大切な友人が駆けつけてくれた。
仕事を休んで「みさのちゃんとお母さん、ようちゃん」が。
マラガに来たとき「音楽が聴きたい」「聴いてほしい」と思っていた
わたしたちの夢が、豊橋でかなった!

仕事を抜け出して、「トミージョ」が来てくれた。
「おお~っ、トミージョ!来てくれたの♪」
って、べラは一生懸命ハグしていた。
「次回は髪の毛、わたしがちゃんとカットしますから!」
と、トミージョはわたしたちの目を見て、力強く言い切った。

嵐のような速さで駆け抜けて行った「藤城さん」。
「ももちゃん!」
と、呼ぶ声も、笑顔も、20年前とまったく変わらなかった。
一瞬の、ほんとに一瞬の再会なのに
こんなにうれしいなんて。自分でもびっくりした。

「会えること」「顔が見れること」が、こんなにわたしたちを幸せにするなんて!
たとえ遠く離れていても、
その間、いろいろな問題を抱えて生き抜いて行かなくてはならなくても
顔を見るだけで、会えるだけで、わたしたちを一瞬にして幸せにする。

蒲郡からは「かまたさん」が右手に花束、左手にスペインの旗を持って来てくれた。
聞けば、旗はなんと手作り。
「振ろうとしたら、みんなまじめに聴いとるでねぇ~、こりゃ振れんなぁー」
って、大笑いしたあと
「スペインで楽しく生き抜けるように!」
と、食料とおもちゃを差し入れしてくださった。

滝澤さんは、父の友人であるが、わたしたちはもう5年近く「文通」をしている。
この日はカメラマンになり、思い出に残る写真をたくさん撮ってくださった。

父はコンサートの司会をし、
母はお世話になった病院に「恩返しができる」とうれしそうだった。
何度も入院し、手術を重ねた母は帰り際
病院の吹き抜けのロビーを見上げながら
「この柱の一本は、お母さんが建てただでね!」
と、誇らしげに言い切った。

べラにとっては、きみどり家に帰る最後の夜。
居間でごろごろしながら、「象」は幸せそうにしていた。
明日はいよいよ、関空へ。
わたしはスーツケースの準備で大忙しだったが
べラはすっかりなついてしまったきみどり家の居間や台所で
みかんを食べたり、両親と話をして、くつろいでいた。
「帰りたくない・・・」
と、言い出されたらどうしようと思ったが、象は物分りのいい動物なのだ。
お寿司で最後の夕食をすませ、おなかいっぱいになると
「おやすみなさ~い」
と、あくびをし、両親の肩を大きな手で叩きながら
「お世話になりました。ありがとう、とみ子さん、のぶゆきさん」
と、日本語で言った。

(「ニッポン驚嘆記・37」につづく) CIMG5718 Imagen 1176

Imagen 937Imagen 1031 Imagen 1169 Imagen 1136 豊橋市民病院コンサート。
1階のロビーにこんなすてきな
音楽空間があります。
定期的に音楽の演奏が
行われているとのことです。
音楽で免疫力アップ♪
なんて、すばらしい!
これからもぜひ演奏させて
いただきたいと思います。

「ガイタクアトロ」さんの
写真が手元になくブログ上で
紹介できず申し訳ありません。

べラが両親へのプレゼントとして
名鉄の中で作曲した「歌」を披露。
手拍子に合わせて♪

きみどり家・恒例のゲーム大会。
最初は「ビンゴって何?」と
言っていたのに
特訓の成果あり!
でも、指が太すぎて穴に入らず
折り曲げられないんだよね(笑)

床暖房の上に一度座ると
もう起き上がれないので
べラだけ、ソファに。
「足からぽかぽか~」
って、大喜び。

べラのせいで
きみどり家の人々の座る場所、
配置図がすっかり
変わってしまいました(笑)

リビングにいるのが
大好きだったべラ。
「緑茶」ばかり飲んでいたので
日本にいるあいだ
「マテ茶」は一度も飲まず。

お箸も上手に使えるように
なったね!
お寿司とお味噌汁
緑茶のセットにも
やっと驚かなくなり・・・

両親に買ってもらった
黒いダウンジャケット。
Tシャツで日本にやってきて
よかったね(笑)

「今年もニッポン行きます!
お世話になります」
べラ

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