【一日一作プロジェクト】石にペイントして「天獣(てんじゅう)」を作った。バルセロナから訪ねてくれたマリは、私の親愛なるドゥーケ(ルイスのあだ名)の奥様。
「久しぶり〜!」「元気だった?」
マリに最後に会ったのは、ドゥーケの亡くなる数日前のことだった。バルセロナの自宅で。ベッドに横たわるルイスのために、私はピアノを弾いた。思えばあれが
「私の最後のコンサート」
だった。あれ以来、人前でピアノを弾いたことはない(レッスン中に教えるために弾くことはあるけれど)。わずか30分の、2人っきりのミニコンサート。ルイスがベッドから拍手をする。あの拍手が
「私のピアニスト人生、最後の拍手」
となった。そして。ルイスにとっても。次々とよみがえる思い出。
「ルイスとベラと3人で、よくマテ茶やウイスキーを飲んだなぁ」「プリンセサ(お姫様)って呼んでたよね、もものこと」
話は尽きない。あんなこと、こんなこと。最後に私たちが一緒にいたのは、ルイスが病院に運ばれる寸前。
「これから失うものの大きさ」
に、私たちは打ちのめされていた。だから、こうして笑える今日に感謝。
「イワシもエビもアサリもおいしい〜」「次回はバルセロナで乾杯だね」
マリの友人・ジュスティンは、ガウディのサグラダ・ファミリアの近くに住んでいる。20年前に見た時も「制作途中」だったけど、まだまだ完成にはほど遠い。
「生きている間に完成が見られるかしら」
笑。もう、そういうレベル。海を眺めながらほっこり3人女子会。あの日、枯れ果てるまで流した涙が、今日の笑顔に続いている!
「サル〜(乾杯)」
私たちを天から見守ってくれるルイスとベラ、愛する男たちに、そっとグラスを掲げた。
(3人女子会は、あさってに続く)