日本上陸記&異丸

【一日一作プロジェクト】ネックレスアート「異丸(いまる)」作った。「日本上陸記・14」。羽田空港1階にある「ハイヤー乗り場」へ近づいて行くと

「こ、こ、これは!」

黒塗りのピカピカと光るハイヤーが20台近く。ものすごい威圧感。ずらっと並ぶとすごいオーラ。当たり前だがハイヤーは「高級個別輸送機関」。それぞれの運転手さんが「顧客をお迎え」に上がっているので

「車から降りてぴしっとした姿勢で、こちらを見つめて待っている」

その中を、ゆっくりと自分のハイヤーに向かって進んで行く。車のナンバーを教えられているので迷うことはない。

「個人、対、個人」

の世界がここにある。それにしても、東京から愛知県まで「ハイヤーで移動」ってすごいな。こんなことが我が身に起ころうとは。誰が想像したことか。日本政府が

「空港からの移動に、公共交通機関を使ってはならない」

と断言したせいで、羽田空港から300キロ離れた実家へ帰るのに「高級個人輸送機関」を利用することになったのだ。新幹線でも十分高級感ある、ってのに(汗)。

スペインの場合、空港に着いたら列車にもタクシーにも乗れる。陰性証明さえあれば。なのに日本帰国者は

「1・スペイン出発前に陰性」「2・羽田空港着後に陰性」「3・収容所3日目に陰性」

と「3回連続で陰性」を出しても、公共交通機関を使わせてもらえない(涙)。なんとかしてくれ〜。厳しすぎやー。これから私が払う

「東京〜愛知県のハイヤー代(片道)は、スペイン〜日本の飛行機チケット(往復)より高い」

のだ(涙)すごすぎる。せめて中部セントレア空港を開けてくれ〜。そんな庶民の声はお上に聞こえるはずもなく

「お待たせ致しました」

優雅な物腰で、スーツ姿の運転手さんが音もなくドアを開ける。穏やかな微笑みを浮かべながら。私はそっとうなずき、ゆっくりと後部座席のシートに身を沈める。スーツケースの事など考える必要はない。

「私に仕えてくれる」

のだ。これから4時間。最高級のサービスと運転。これを「豪遊」と言わず何と言おう。それに。もうこれきっりかもしれない。こうしてお抱え運転手がつくのは。

「だったら、楽しもう〜」

きゃー。初体験。普段の自分なら「絶対しないお金の使い方」をすることで、見えるもの、わかるものだってある。今は喪失でも、数年後には

「あの時の体験が、こんな風に身を結ぶなんて」

ってことだって(←あるのか?)笑。ふかふかのシートに身を預け、流れゆく景色を眺める。青い空がグレーに見えるのは、特殊ガラスのせいだ。

「この車は、私を家まで届けるために走っている」

金持ちって、すごいな。少なくともこの体験は、いつか小説を書く時にはきっと役に立つはず。絵は知らんが(汗)。

「休憩を取りますね」

羽田空港から約2時間。車は富士川サービスエリアへ滑り込む。トイレを終えて車に戻ると、その後方に・・・

「あ、あれは富士山⁉︎」「そうです」

あぁあ、なんて美しい。青い空の下、あんなにも裾野を広げて。なんて麗しい姿だろう。

「富士山を見るの、数年ぶりなんです。スペインに住んでいて」「天気でよかったですね」

運転手さんは微笑みを浮かべて、私が写真を撮るのを隣で待っていてくれた。富士山を見て、こんなに感動したのは初めて。

「日本に帰って来たんだ」

やっと実感が湧く。羽田空港でも収容所でも「人工の空間」の中では、この感動は押し寄せなかった。

「空、風、緑、山、音、匂い、そして人がいるから」

私たちは、物語を紡ぎ出すことができる。Rさん、すばらしい運転&快適空間をありがとうございました。羽田空港から4時間、ついに豊橋の実家へ到着。はたして、待ちに待った父との再会は。(明日に続く)

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「日本上陸記&異丸」への2件のフィードバック

  1. 今頃お父様と再会を果たしていらっしゃることでしょうか!
    お父様、どうかお元気でありますように!
    富士山はいつ見ても特別な感動を与えてくれますよね。
    ハイヤー代は飛行機代より高い(驚愕!)
    お陰さまで歩行可能ですが、この病院では痺れの原因は見つからず、共存するしかなく、筋力でカバーするしかなく、しかし超短距離&短時間しか持たない為、シルバーカーの利用を考え中(あの、おばあちゃんたちがよく押してるやつ。どこででも折り畳みの椅子を開いて休憩できる)。
    なのでここでは治療は無く、リハビリも「小出しで歩く」のみ、なので、そろそろ退院か。
    しかし今のマンション(激坂の上&3階)では生活していけないので、またも引っ越しをしなくては(号泣)
    それまでの間、どうするのか?!
    私もタクシー豪遊生活か?!
    お互い本が書けそうですねー

  2. なんとMayさん!そうなんですか。
    自力で回復するしか(涙涙涙)。
    トレーニングと言っても
    私達の歳になると筋力をつけるのも難しく
    (その上、Mayさんは短時間しか動けない)
    本当に考えてしまいますね。
    どうしたらいいものか。

    そして。また引越し!!!!!(驚愕)
    世界中を引越ししたMayさん。
    また日本でも(涙)。
    手伝ってくださるご家族の方々やお友達は
    いるのでしょうか。

    1日も早く生活が落ち着きますように。
    そして体力・筋力が回復しますように。
    Mayさん、応援しています。がんばって〜!

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