遅咲き種

【一日一作プロジェクト】ペイントして「遅咲き種(おそざきだね)」を作った。スペインは日本より日の出・日の入が2時間ほど遅いので

「朝の8時でこの暗さ」

笑。まだ夜みたい。クリスマスツリーが街灯代わり。しーんと静まりかえった公園には、人っ子1人いない。犬1匹。朝8時といえば、日本なら散歩をする人でけっこう賑わっていそう。

「クリスマスツリーとヤシの木」

この組み合わせが意外と合う(笑)季節感があるのかないのか。エキゾチック・マラガ〜。早朝から用事を片付けに走り回る。

「クリスマスになったら、何も誰もあてにならない」

みんな心はクリスマスだから。そんな中、うちのトイレのタンクが故障。チョロチョロとたえず水が流れ続ける。量としてはわずかでも

「24時間流れ続ける」

ので、さすがに気になる。いや、正直に言うと、私は気にならない(←ずぼら&集中していると何も聞こえない)。気になるのは、マンションの下の階に住むFさん。

「水音がずっとしてるーーーーっ」

と、ものすごい勢いで電話がかかってきた。とはいえ、私たちは15年以上のつきあいなので、口調や勢いの割には大きな問題にはならない。

「わかりました。すぐ手配します」

さっそく水道屋のAさんに電話。これまでに何度も来てもらっているので、安心してお願いできる。実は定年リタイアしたのだけど

「簡単なものだったら直してあげるよ」

というわけで、これまでにもちょこちょこと直しに来てくれた。今回もタンク内の部品を変えるだけ(←想像)なので、安心しきって電話をすると

「それがねぇ、今オリーブの実を収穫していて」「はぁあ?」「畑にいるんだよ」

聞けば、2年前から知人のオリーブ畑で「収穫の仕事」をしているらしい。まだ数日かかるうえ

「自然の中で働くのはすばらしいよ!もう水道屋はやめた」

Aさんの声は大きく、ゆったりと弾んでいた。しばらくオリーブや畑仕事の話を聞きながら、Aさんが今まで以上に幸せなのに、こちらまでうれしくなってしまった。

「ごめんよ。もう直してあげられない」「ううん、大丈夫。すてきな仕事が見つかってよかったね」

オリーブ畑の中で笑っているAさんの姿が、ふいに浮かんだ。工具の代わりに、オリーブの樹に囲まれて。青空の下、太陽の光をさんさんと浴びながら。

「遅咲き種(おそざきだね)」

人生にはいろいろな道が隠されている。思いがけない転機や出会いが。遅咲きでけっこう。いや、遅咲きだから、楽しい。自信を持って「遅咲きだね!」と謳いあげよう(笑)。まだまだこの歳になって

「こんなに楽しいことがある!」

50年、60年たって出始める「芽」を持っていられるって、最高じゃない?(笑)。

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