歓花

【一日一作プロジェクト】「歓花(よろこびばな)」を作った。早朝3時半。1番乗りで搭乗手続きのカウンターへ。提示を求められたのはパスポートだけ。大量の荷物も問題なく通過。ひと安心と思ったら

「この箱だけ、税関のチェックを受けてください」

ストップがかかったのは、作品が詰め込まれたダンボール箱。「中身の確認が必要」と、地下の秘密部屋へ連れて行かれる。じっと私の顔を覗き込む担当のおじさま。

「箱の中身は?」「私の絵です」「何枚?」「たぶん50〜60作、いやもっとかな?」「そんなに!どんな作品が入ってるの?」

一日一作プロジェクトの話、急な引越しで作品の置き場がないこと、アートこそ私の人生など、朝の4時に力説。なんとか「箱を開けないで」いいようがんばる。なんせ

「規定外サイズの大箱を手作り」「ガムテープでぐるぐる巻きに」「さらにぷちぷちでしっかりガード」。中身を見るためには、カッターで箱を切り裂くしかない。

「私の絵です!」「いやぁ、まあ、ピカソかもしれないから」

ピカソ!!!(笑)。スマホを取り出し、作品写真をスクロールして見せる。10点・・・30・・・50・・・100・・・

「こ、これ、みんな君が描いたの⁉︎」「はい。残念ながらピカソではないけれど」「いやぁ、すごいよ。これなんか好きだな。100年後にはきっと有名になってるよ」「だと生きてないので、10年でなんとか〜」「はっはっは、がんばって!」

力強く送り出され、セキュリティチェックを無事通過。やっとサンドイッチ&紅茶にありつく。朝の4時半から朝食が食べられるマラガ空港って、すばらしい〜。

「まずはパリまで2時間半」

飛行機に乗り込むと、見事に満席。マラガ空港も、飛行機内もマスクなし。昨夜から寝ていないので、さすがに眠気が襲ってくる。ひと寝入りすると、もうシャルル・ド・ゴール空港。

「うわっ、雪が〜」

20度のマラガから、雪のパリへ。わずか2時間半で世界が変わる。乗り換えもスムーズ。どこに行っても「陰性証明書」も「QRコード」も求められない。搭乗の列に並んでいると

「鼻水ダラダラ、咳の止まらない女性3人組」

が。勢いよく咳とくしゃみをくり返し、涙目で鼻をかみ続ける。こんなひどい風邪でも「3回接種」していれば乗れる。接種回数(過去)より、今の状態(現在)やろ〜。

「どうか隣になりませんように」

祈りながら、パリ〜成田便に乗り込む。これまた満席。先ほどの大風邪3人組は、私の数列前。やれやれ。飛行機の翼に積もった雪を取り除く作業などで、1時間遅れで出発。遅めのランチが届けられる。

「まずは赤ワインで乾杯〜」

食べて飲んで、映画を見て。昼寝して。機内を歩き回って。約13時間のフライト。飛行ルートを見ると、へぇえ〜。カスピ海、黒海、アラル海の上を飛んでるんだ。体はへとへとでも

「日本上陸できる!」

歓びで、元気が湧いてくる。ってか、「Visit Japan Web」に登録していないけど大丈夫なのか?QRコード3つゲットしていないけど、日本入国できるのか?まあ、心配しても仕方ない。

「朝食をしっかり食べてエネルギーチャージ」

なんせこれから、スムーズでない入国審査→荷物を宅配で送る→成田空港から東京へ移動→東京から豊橋まで新幹線で移動。が、待っている。機内で6本目の映画「北斎」を見ていたら、日本の大地が見えてきた。

「スマホ画面にQRコードを出してお進みください」

飛行機を降りるや、何度もかけられる言葉。ここで運命が分かれる。はず。スムーズ入国と、そうでない者と。

「登録してないんですけど」「QRコードは?質問票のみ?」「はい」

「こちらにお進みください」と示された通路には、私たち3人だけ(日本人男性、外国人男性と私)。互いに顔を見合わせ、不安に襲われながらも、がらーーーんとした廊下を歩き続ける。

「1人でなくてよかった」

と、互いに心の中で思う私たち(笑)。信じられないほど、通路には誰もいない。ってか、何もない。ほったらかし。しーんと静まり返った通路をひたすら進む。エスカレーターを上り、降り、右に、左に。

「これが『スムーズでない入国』の末路か」

と思っていたら、前方に動き回る人々の姿が見えてきた。おぉお〜。ようやく「主流」に合流か?ここから必須書類のチェックか?と思った瞬間

「えっ、もうバッゲージスペース?」

ベルトコンベアーに乗せられて、スーツケースやバッグが運ばれてくる。まだ何もチェックしていないけど、荷物を引き取っていいの?周りを見回すと

「こちらでQRコードを確認します」

的な表示が出ている。チェックは荷物を受け取った後なのか?なんとかカート2つに、荷物を分けて積み上げる。が、どれだけ待っても、最後の1つが届かない。それが

「作品の入っていた規定外サイズの大箱」

なので、冷や汗が〜。あわててカウンターへ。窓口へ届け出ると「パリにあるので、次の便でお届けします」「確かにあるんですね⁉︎」「大丈夫です」。やれやれ。数日内に自宅まで送ってもらえるとのこと。

「次はいよいよ必須書類の確認」

のはず。カート2つを係員のお姉さんに押してもらいながら、入国審査へ向かう。「紙ですか?デジタルではなく」そこでまた、違う方向へ案内される。ことごとく主流から外れ、人のいない方へ。

「パスポートと税関の申請用紙」

を提示。まだ「陰性証明書」も「質問票のQRコード」も見せていない。その時、信じられないことが起こった。「はい、どうぞ」と軽く入国審査を通過。カートを押して進むと

「えっ、もう外?ええっ、出てもいいの⁉︎」

めちゃスムーズやん(笑)。陰性証明書もQRコードもノーチェック。もしかしたら「今回は偶然そうだった」「運がよかった」だけかもしれないけれど。狐につままれたような気持ちで、よろよろと宅配コーナーへ。実家に送る手配をすませ

「成田空港から東京へ」「東京から豊橋へ」

長旅は続く。のんびりお弁当を食べていたら「富士山」が見えてきた。日本の聖山。なんて美しい〜。ふいに、映画「北斎」のワンシーンを思い出した。

豊橋駅に到着。徹夜続きでふらふらだったけれど、笑顔で手を振る父の姿に、疲れも吹っ飛ぶ。感謝。全てに感謝。

「お父さーん!」「よく帰って来たなぁ、疲れたろう」

元気な父に会えてよかった。ここまで、ひたすら駆け抜けた2022年。やっとゴールにたどり着く。明日からはしばらくのんびり。と、思いきや、いきなり始まる実家の自力リフォームなのだった。(明日に続く)

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「歓花」への2件のフィードバック

  1. おかえり、ももちゃん。
    昨年、読んでから もう3月になってた。
    遅くなったけど、お帰りなさい。

    作品はどうやって送ったのかなぁと気になってます。
    近いうちに、ご飯しましょう。作品のアップ楽しみにしてます。

  2. さとみさん、お久しぶりです。
    お元気そうでよかった!!!
    怒涛のメッセージ、ありがとうございます。
    さとみさんらしい〜(笑)

    家のリフォームに追われ
    お返事が遅くなりすみません。
    これからひとつひとつ読ませていただきますね。
    楽しみだ〜。

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