【一日一作プロジェクト】「未来咲(みらいざき)」を作った。ついにご対面の瞬間が!ナナちゃんは外の鳥かごに。ココは室内のリビングに。ガラス越しに互いを見つめ合う。
「ぴぴぴっ」
すぐに反応して近づいて行ったのは、なんとナナちゃんだった。その表情は明るく、興味深々。ココはぼーっとしている。
「ケンカはなさそうだね」「ナナをリビングに入れてみようか」
鳥かごからナナちゃんを取り出し、そっとリビングへ移動。最初は3メートルくらいの所で。お互いの存在を確認。大丈夫そう〜。次のステップは
「テーブルの端と端に、2人を置いてみる」
きゃー。どきどき。初めて見る光景に、私の方が緊張。2人をテーブルの上に置き、自由にさせてみる。ペペと私はお茶を飲みながらおしゃべり。まるで
「4人家族」
のように。まだ緊張感はあるけれど、ナナちゃんがフレンドリーで「テリトリーの侵入者」に対してもおおらか。おっとり。オウム界でも、男女の仲は
「メスが、イエス・ノーを決める」
らしく、決定権を待つのはメスとのこと。まずは受け入れてもらえたようで、やれやれ。ほっとしたら、とたんにお腹が空いてきた。
「ぐぅーーっ」
初対面で、お腹を鳴らす〜(笑)。そういえば、朝食もランチも食べていなかった。すでに午後4時半過ぎ。リュックから食料を取り出し、ガツガツ食べていると、なんとココもテーブルのひまわりの種を
「バリバリ、ぼりぼり」
すごい勢いで食べ始めた。それ、ナナちゃんのだけど〜(汗)。それを黙って見守る、心優しいナナちゃん。おっとりさん。箱入り娘なのかもね。これが逆なら、飛びかかっていたはず(ココは野生児)。その時
「ぴぴぴーっ」
とナナちゃんが羽ばき、天井のブランコへ。それが、ちょうどココの頭上あたり。ペペいわく
「ココに近づきたかったんじゃないかな」
なんとブランコで軽いダンスを披露。かわいい〜。女の子ってこうなんだー。そっと腕を差し出すと「ぴょこん」と乗ってくれる。きゃー、初対面なのに。なんてフレンドリー。
「ココは誰の腕にも乗らないから、ごめんなさい」
ペペに謝ると「僕はいいよ。大切なのはナナとココがうまくいくことだから」。保護鳥センターの話では「新しい環境に慣れるには半年から1年かかる」「結果が出なくても長い目で見守るように」とのこと。
「2人の家に案内するね」
庭の一角に作られたオウムの家は、2,5メートル平方。分厚い壁に覆われ、夏は涼しく冬は暖かい。2つの窓。南に向いた入口(金網戸)からは、さんさんと太陽の光が差し込む。
「あと1時間で完成だよ〜」
中では、ペペのお父さんが「暖房システム」を取り付けていた。聞けば、18度を下回ると自然に暖房が入るシステムになっているらしい。
「春には、庭に自由に飛び回れるスペースを作る予定」
その骨組み、土台作りがすでに始まっていた。出来上がれば、5×3メートルものスペースになる。春かぁ。できれば私も手伝いたいな。ドライバーやノコギリ片手に。6時間ほど、ペペとナナちゃんと過ごすうち、私の心は固まった。
「ぷぷぷっ」「ひゅ〜っ」「ぐわっ」
見慣れぬ家の様子に、ココは落ち着かずキョロキョロ。そうだよね。私だって。正直、不安が9割。でも、私たちには「挑戦」するしか、道がない。ここで、覚悟を決める。
「よろしくお願いします」
ペペの手にココを委ね、帰り支度をする。まさかオウムは「自分がここに置いていかれる」とは、思ってもいないだろう。これから始まる毎日の中に、私はいない。明日も、あさっても。そのどこにも。
「駅に送って行くよ」「ありがとう」
これから、どうなるのかわからない。でも。まずはトライしなくちゃ。私だって何も知らずに、スペインへ飛び込んだ。そして、新しい生活、新しい自分が始まった。
「あの時、飛び出さなければ」
音楽屋になることも、ベラに出会うことも、ピアノの先生になることも、アートを真ん中に据えて生きることも、なかった。
「これは終わりでなく、始まり」
次のステージは、今始まったばかり。もしどうしてもダメなら、迎えにくればいい。半年のお試し期間と考えれば。
「写真や動画を送るね」「また伺います」「だったら、おもちゃ持ってきて」「了解!」
車の中で、私たちは笑った。どんなに心がはり裂けそうでも。まずは、私が信じなきゃ。自分たちの未来を。ペペとハグをして別れると、通りのバルに飛び込んだ。
「全力でのぞんだ旅に。冒険に乾杯」
ビールの味は苦かった。泣いていてどうする。オウムを守るためには、まず私が元気でいなくては。そして。もっと強くなろう!大切なものを守るために。
(ペペの希望で写真はNG。今期の作品を紹介中。明日に続く)